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第108話 秘密の会談
「先見の賢者か…。確かにそんな話は聞いたことが無いな。
でもキースはリオンがその賢者かもしれないって思ったんだろう?
リオンの事を昔から知ってる人間はそう感じるって事だな。リオンはどう思った?」
アーサーは僕の方を見ながら聞いてきたので、僕は目を瞑って考えながら答えた。
「そもそも先見の賢者が得体が知れないから何とも言えないけど…。
確かに小さい頃から僕何でそう思ったんだろうとか、何で知ってるのかなと感じる事は度々あったよ。
数術研究室で今皆んなで研究してる事とかは、ボンヤリとだけど僕の頭の中に大まかな地図があると言う感じだし。
それを誰かに言ったことはないけどね。」
「はぁー。そっか。やっぱり、自覚ないけどリオンは賢者なのかも知れないな。」
キースはなぜかすっかり疲れた顔でつぶやいた。
「でも、もしそれが明るみに出たら、リオンは王宮に閉じ込められる可能性だってあるんじゃないか?
そんな先見の賢者の知識で世界が変わるとしたら、他の国に攫われない様に国として守らないといけないだろ?」
言いながらユアは僕の頬を撫でながら抱き込んだ。
僕はユアに抱きついて、ユアの爽やかな匂いを満喫しながら呟いた。
「んー。でも今までだって大丈夫だったんだし。今更どうこうなるとか、有るのかなぁ?」
「全く、どこでもいちゃついて。とにかく今一番に考えないといけないのはロナルド先輩のことだ。
先輩は賢者の事に結構詳しそうだし、思い入れもありそうだ。
だから、もしリオンが賢者かも知れないって思われたら大事になると思う。
ここは、リオンの今の生活を守るためにも今以上に目立たない様にしよう。分かったか?リオン。
はぁ、ほんと一番気をつけてほしいリオンが一番頼りないってどうなんだ。ユア、良く言い聞かせてくれよ?
アーサー、俺たち先に戻ろうぜ。これ以上一緒にいたら身体が甘くて溶け出すぞ。」
そう言って、キースはアーサーと立ち去った。
僕はユアに抱きつきながら考え込んでいた。
もし僕が先見の賢者とか何かで、目をつけられたらどうなるんだろう。
「リオン、今までも悪いことがあった訳じゃないし、どちらかと言えば今までにリオンの考えたあれこれはいい事ばかりだっただろ?
ただ、確かにリオンの自由な生活が蝕まれるのは俺も反対だ。
リオンは俺の婚約者なんだから、俺がリオンを守るよ。だからリオンも気をつけて…。」
「…ユア。僕もユアの側にずっと一緒に居たいよ。…愛してる。」
僕はユアの首に腕を巻きつけて引き寄せた。ユアの厚めの唇は濡れていて、熱かった。
あっという間に口いっぱいユアの存在感に圧倒されて、僕は漏れ出る吐息も絶え絶えになってしまった。
月明かりの下、僕たちはいつまでも抱き合っていたんだ。
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