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第109話 僕が賢者?

僕は簡易ベッドの上で寝返りを打っていた。 他に起きてそうな学生はいない。ユアがあんな昂る様な口づけをするから眠れなくなった…。 僕は暗闇で目を開けながら、先見の賢者について考えてみた。 僕が自分の中の違和感に気づいたのは…、そうだ、子供の頃だ。 気づいたら周囲の事をすっかり忘れていて、屋敷中が大騒ぎになったっけ。懐かしいなぁ。 目覚めて、自分が何者かよく分からなくて不安でお兄様に一緒に眠ってもらったんだった。 ふふふ、そんな時から僕はお兄様が大好きだったんだな。 今考えてみると、その頃のお兄様だって今の僕より幼いんだ。ちょっと信じられないな。 お兄様はどんな時も僕にとっては道標なんだから。 あぁ、ついついお兄様の事ばかり思い出しちゃうな。 そうだ、その頃焼き菓子が物足りなくて、僕の知ってるお菓子を料理長に作ってもらったっけ。 そうか、その僕の知ってるってのが先見なのかも。だってみんな知らなかった…。 まぁお菓子くらいじゃ世界は変わんないよね? あとは…馬車のユニーを見てびっくりしたよね。何で角生えてるのって。あれは今も違和感があるな。慣れたけど。 あとは…子供の頃の算術。家庭教師も僕のこと天才って褒めてくれてた。あれも見ただけでほとんど楽勝だったから関係あるのかな? 数術研究室で考えてる領地運営の数的捉え方のいくつかも、僕の頭の中にふわふわと漂っていたものだよね? こうすればいいとか閃くというより、知ってる事を引っ張り出すって感覚。 僕はどこからその知識を得たんだろう。そう考えるとちょっと不気味だな。僕って凄い怪しくない? どうしよう。皆んなに捨てられたら。…お兄様とユアは捨てないよね?僕、信じてるからね。 結局少し悲しくなってしまったまま、僕は眠りについた。 「リオン、リオン起きろ。朝だぞ?」 「んっ。なに…。」 「ああぁ、またそんな無駄な色気振りまいて!起きろ!」 キースの怒鳴り声で起きるのは気分悪いな…。 「キース、大きな声じゃなくて、優しく口づけで起こしてくれたら僕も良い気分になるのに。 ほんとデリカシーがないんだから…。」 「俺はユアじゃねぇ!全く、どこでもユア基準で求めるなって。俺は心配だよ。」 「キースは僕のこと随分心配してくれてるんだな?」 キースは僕を憮然とした表情で見ながら囁いた。 「しょうがないだろ?リオンは俺たちの大事な宝物だったんだ。今となっちゃ、腐れ縁でしょうがなくだけどな。」 僕はちょっと赤らんだキースの顔を見ながら思ったんだ。 キースってば。これがほんとのツンデレだよね?お母様?

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