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第111話 週末のお話し合い
「では、リオンが先見の賢者ではないかとプレッサー伯爵家の令息は口にしたのだな?」
お父様は難しい顔をして、僕を見つめた。
隣に座っているお母様も不安そうだ。お兄様は顎に手を当てて考え込んでいる。
「父上、父上は先見の賢者について聞いたことがありますか?」
「…うむ。あると言えばあるし、無いと言えば無い。というのも、この話は先見の賢者という形で話があるわけでは無いからだ。
一種の御伽噺的な形で存在している。誰でも知ってると思うぞ。七星の奇跡だ。」
僕たちは思わず顔を見合わせた。七星の奇跡という話は小さい頃に誰でも読む絵本だからだ。
「今回、リオンが関係してくるかもしれないので、ここだけの話だと思って聞いてくれ。
この話は御伽噺だと思われているけれど、そうではない。
他国に知られぬように、史実として過去の功績を言い伝えたようだ。
この事は王宮内でも、ある一定の地位に付かないと知らされぬ。私も団長になってから知らされた。」
お父様は真っ直ぐ前を向いて自分の中で確認する様にゆっくりと話した。
「…なぜ団長クラスになると知らされるのでしょう。御伽噺として広まっているのですから、知らなくても良いはずでは?」
お兄様の反応に、お父様は僕を見つめて言った。
「やはりその話が史実だったという事は、また同じ様な事が起きる可能性があるので、それをある一定の人間が把握しておくためであろうな…。」
皆が僕を見た。
え?僕って標的になっちゃうって事?
「確かに昔からリオンは我々が思いつかない様な事を言いがちですが、それが先見の賢者かとなると…。」
「…先刻、リオンが第二王子に謁見したであろう。王族のあの行動はある種の囲い込みと言っても良いだろうな。
ただし、賢者として扱ったものではないのはハッキリしている。
もし賢者として扱われた場合、今ここにリオンは居ないであろうから。ただし、今後はわからない。
我々はリオンに自由に居て欲しいと思っているが、…リオンはどう考える?」
「…僕の思いつくものなんて、七星の奇跡に比べたら天と地ほどの差があります。
ですから賢者なんて大それた扱いなんて御免ですし、僕は今の生活が気に入っています。
ロナルド先輩の思いつきに巻き込まれたくはありません。」
僕は何だか嫌な空気にまとわりつかれる様な気がして、首を振った。
「父上、時世はどう変わるかは分かりません。私としては早くリオンの地位を固めた方が良いと存じます。
私と直ぐにでも結婚をさせて下さい。」
兄上は僕の顔を見て、僕の手をぎゅっと握りしめると、真剣な顔で父上に願い出た。
「…確かにリオンの今の地位は伯爵家の次男で、婚約者といっても吹けば飛んでいきかねない。
多少早いかもしれぬが、結婚して確実に足場を固めるのも正解かもしれん。リオンはどう考える?」
「…お兄様と直ぐにでも結婚するんですか?」
僕は呆然としてお兄様のアメジスト色の美しい瞳を見つめた。
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