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第115話 キースside急な結婚
リオンがまたやらかした。
というか、今回はリオンのせいというには可哀想か。
リオンが今年の社交界の始まりと同時に結婚するという話は、またもや王都の一番の話題となった。
確かに女性なら、俺たち世代でも結婚する者も出てくるころだ。
しかしあのリオンだ。
見る者を虜にする麗しさだけじゃなく、今や数術研究室での存在感も大きくなっているのは世間でも知るところだ。
そしてここに来て実兄スペード伯爵嫡男と、幼馴染のタクシーム侯爵家嫡男との同時結婚だ。
これが話題にならなかったら、おかしい。
俺とアーサーはもう何だかリオンのやる事、なす事に随分慣らされていたし、先見の賢者の話もあってまぁそうだよなと妙に悟りを開いた感じだ。
「そうは言っても、準備期間がなさすぎなんじゃないの?」
アーサーは優雅にお茶を飲みながら俺に問いかけてきた。
「ああ、俺もそう思ったんだ。でも全然大丈夫そうだった。
リオンに聞いたら、お父上も兄君もユアもとっくにリオンのために婚礼道具やら、式服やら装飾品を用意してあったみたいで、実際どれを身につけるか悩んでたくらいだ。
俺に言わせりゃ、リオンを手に入れるために婚約者達は手を尽くしてるって事だな。ハハ。」
俺はちょっと呆れて乾いた笑いが出てしまった。いかんいかん。
「キースは聞いてる?リオンが結婚するのは二人とも嫡男だよね。まぁ嫡男とのパートナーとしての役目はその都度するとして、実際の生活はどうするんだろう。
誰が考えたって複雑になりそうなんだけど…。」
「そうだよな。領地に帰るったって、それぞれ別の場所だし。王都はともかくなぁ。」
アーサーは不意にクスクス笑いながらこちらを見た。
「あのリオンだよ?絶対どっちも行きたがるだろ?リオンはああ見えて野生児っぽいところがあるから。
人魚だったのもそう昔の話じゃないし。ふふ。」
「結局、リオンは今まで通り好きに生きて、兄君やユアがリオンの望みを叶えるために四苦八苦頑張るって事だな?
まぁあの溺愛状態じゃ、四苦八苦と言うより喜び勇んでって感じだろうけどな?」
アーサーは悪戯っぽい目つきで俺を見つめるとウインクして言った。
「じゃあ、俺たちはリオン達を見守るために、これからもずっと一緒だね?…キース。」
俺はアーサーの醸し出す何だかムズムズする様な、妙に色めかしい空気に呑まれて急に胸がドクリと大きな音を立てるのを感じたんだ。
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