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第116話 特別な朝

「リオン様、起きてください。」 セブが僕の部屋の幕を上げて朝日が部屋に柔らかく降り注いだ。窓の外に見える樹木は黄色や赤に色づいてキラキラと輝いている。 「…何だかセブがそうしていると、僕は小さな男の子に戻ってしまった気がする。」 「ふふ、このお部屋で目覚める最後の朝ですからね。子供扱いも宜しいと思いますよ。」 セブにしては優しく言うと、僕は急に里心がついてしまった。 「セブには随分心配かけたよね。僕よく分かってるつもりだよ。 僕は昔からちょっと変わった子供だったのは間違いないし。 セブが居てくれたおかげで、僕は何の心配もせずにここまで来れたんだ。ありがとうセブ。 …これからセブが居ないなんて僕、ちょっと信じられないよ。」 セブは少し黙った後、僕ににっこりと微笑むと言った。 「…申し上げていなかったのですが、伯爵から私もリオン様について行く様にとのお話がありました。 ですから私はこれからもリオン様に仕えさせていただきます。もちろんリオン様のお子にも。」 僕は嬉しい喜びにベッドから飛び降りてセブに抱きついた。 セブはまだ僕より背が高いけれど、昔腰に抱きついていた頃と違って、セブの優しい香りを感じる肩に頭を乗せて呟いた。 「僕、本当に今日結婚するのかな?」 セブはやっぱりクスリと笑うと僕を優しく抱きしめて言った。 「ええ、今日リオン様は幸せな花婿になりますよ。」 それからは記憶にないくらい慌ただしさの渦に飲み込まれた様だった。セブの指揮の元ピカピカに磨かれた僕は、本当に文字通り磨かれたけどね、今はソファに座って食事中。 セブとタクシーム侯爵家から来ている世話人クリスが二人でこれからのスケジュールを確認している。 この二人はすっかり仲良しというか、似た者同士というか、非常に気が合っている。うん、お小言が一緒だ。 結局僕たちは月の1/4を侯爵家でユアと僕、1/4を伯爵家でお兄様と僕、1/2を僕と二人で別宅で過ごす事になった。 別宅は僕の通学を考えて学院の側に新しく建てた。美しい館になって僕はとても気に入っているんだ。 本当は 1/3づつにする案も出たんだけど、二人が10日も僕と会えないのは辛いんだって。7日も10日もそう変わらない気がするけど…。 でもこの前気づいたんだけど月の半分も二人と一緒って、僕の身体が持つのかなってちょっとゾッとしたのは内緒。 うーん、嫌な予感しかしない。 まぁ二人とも僕の事一番に考えてくれそうだからあんまり心配はしてないけどね。

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