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Trac01 Basket Case/Green Day 前編

『ーーーー俺の泣き言を聞く暇があるか?』 Basket Case/Green Day ※暴力表現注意 ーーーーーーーーー 茶色く逆立った短い髪、シャープな輪郭の中にはソバカスが散って、切れ長の目は刃物のようにギラついている。 ホテルに行って下着だけで風呂場から出てきた瞬間、腹に蹴りを入れられて夕飯を床ぶち撒けそうになって、見上げた顔がそれだった。 「何?こういうのが好きなの?」 込み上げる酸っぱいものを、唾と一緒に押し戻しながら言った。 そいつは、山田っていったっけ、髪と同じ色の眉をひそめた。 「やるなら最初に言っとけよ」 立ち上がるとまた殴られた。 「逃げんな」 少し上擦った声で言われた。 「殴らなくても逃げねえよ。セックスするなら相手してやるっつーの」 あ、顔に跡つけるのはナシで、と言ったら、山田はまた俺を殴って、うるせえよ、と床に叩きつける。 山田はズボンを下ろして 「しゃぶれよ」 とヤツのモノを顔に突きつけてくる。 今日はこんな感じか。本当は無理矢理とかあんま好きじゃないんだけど。 「いいからしゃぶれよ!」 怒鳴るなよ。だから言えばやってやるって。 俺がウンザリした顔を向ければビンタされた。だから顔はナシだっつってんだろうが。 仕方なく、俺は舌を伸ばした。 なんでこんな事になったのかっていうと、1時間くらい前のことだ。 ーーーーーーーーー 「え、無理矢理っぽいのが好きなの?」 「すいません、こんな事頼んで」 ホテルに向かって歩く途中、山田は髪と同じ色の眉を下げて言った。 「いやなら断ってくれていいっス」 スカジャンを着た身体を小さくする。 「普通にヤればいいじゃん」 「・・・そういう事しないと、ヤれなくて」 「ウリセンでやれよ」 「そこまで金無いんス。会社、クビになりそうだし」 ウリセンはゲイ専用の風俗みたいなもんで、嬢よりは安いけど相場は本番ナシでも15000から20000と決して安くはない。 「じゃセックスしてるヒマねえんじゃねえの」 「そういう時だから、余計にシたくて。 もう我慢できなくなっちゃって」 まあわからんでも無い。 山田の肩も声も震えている。泣くのを我慢しているみたいに。 「俺が嫌だって言ったらどうする?」 「・・・帰ります」 「どうすっかなぁ」 ホテルにはもう着いてしまった。 山田は捨てられた子犬と言う表現がぴったりな顔をしていた。むしろこっちが虐めたくなる。 というか、もうどうでもいいからセックスがしたくてしょうがない。 「わかった。行こ」 「えっ本当に?殴ったり蹴ったりとか、大丈夫ですか?」 「あー・・・」 俺は頭をかいた。 そういうのはやった事がない。最中に首絞められたり歯型つけられたりした事はあるけど。それに、ユウジに無傷で帰ってこいって言われてる。 「じゃあ、顔とかに跡つけるのはナシで」 まあバレなきゃいいだろ。 俺たちはホテルに入っていった。 そして今、口の中は生臭い匂いと血の味がする。精液を飲み込むのは正直吐きそうだった。 「水飲んでいい?」 そう聞いたら、山田はズボンを上げると俺の髪を引っ張って歩いて行った。風呂場に突っ込まれ頭からシャワーをジャンジャンかけられた。 ちょっと待て、パンツはいたままなんだけど。 山田も服を着たままのくせに御構いナシだ。 「飲めよ」 胸をつま先で蹴られる。気持ち悪さに負けて、顔を上げて少し口を開いて中を洗い流した。 でも山田は顎を掴んで、更に口を開かせてきた。苦しいよりも鼻に水が入ってきて痛い。 むせると喉に水が流れ込んで、呼吸ができなくて一瞬マジで死ぬんじゃないかと思った。 鼻からも口からも液体を垂れ流しながら、山田が拳で全身に跡をつけるのを必死に腕で塞いだ。 「おい、やめだ、やりす」 水が出たままのシャワーヘッドで頭をぶっ叩かれて目の前がチカチカした。 いやマジで? ここまでやるとは思ってなかった。約束通り顔には手を出してこないから、殺す気はないらしい。 山田が手を挙げただけでビクッと身体が反応すると、ヤツはどこか安心したようにニヤリとした。 下着を剥ぎ取ると足を開かせてアナルにシャワーを当ててきた。指をグイグイ入れてくる。 「痛い。ローション使えよ。あっただろうが」 無視して指を増やされた。入り口が裂けそうで歯をくいしばる。 山田も全身びしょ濡れになって、野良犬のように目をギラつかせている。でも、服は着たままだ。 「オイ、やめろっつってんだろ!」 怒鳴って顎に蹴りを入れてやった。 クッソ外した。 山田は細い目を目一杯見開いて、物凄く驚いた顔をしていた。手を掴んで孔から指を引っこ抜く。起き上がると、山田はびくりと震えた。 「俺やっぱ帰るわ」 なんか萎えちまった。 今日はハズレだ。今度からこういうのは断ろう。普通にめちゃくちゃ痛いだけだ。 ヤツは腕を顔の前で交差させて震えている。 「なんだよ、お前、なんで、」 山田はブツブツ言ってて、片方の手をぐっしょり濡れた上着のポケットに入れる。 折り畳み式のナイフが、パチンと顔を出した。 待てまてまてまて。それはシャレにならないし聞いてもいない。 床に組み伏せられて、背中で飛沫が跳ねた。情けないことに声が出てこない。 「おい、待」 やっと声が出たのは、ヤツがナイフを振り下ろしてからだった。

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