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ハロウィンはカップルシートで

「羽生さん、考えたんですが今年のハロウィンはあなたと私でコンビを組んで」 「ハブとマングースの仮装はしねーから却下」 「すごい、言おうとしてることがわかるんですね。これぞ以心伝心、尻と尻で繋がったお尻合いの絆」 「繋がった場所がちげーだろ。ていうかハロウィンまでお前に振り回される義理ねーよ、仮装なら山手線の混雑だけで間に合ってる」 「ああ、この時期は愉快な格好をしたパリピが沢山乗られますよね。皆さん渋谷に行かれるのでしょうが、交通整理が大変そうで管轄区域の方々に同情しますよ」 「大体よー日本人はハロウィンをはっちゃけの口実にしてるが向こうじゃお盆だろ?あの世から帰って来る死者を迎える行事だろ。なのに路上で夜通し馬鹿騒ぎって、葬式でサンバ踊るような罰当たりじゃねーのかよ」 「ハロウィンの主旨を全否定しますね……」 「いや、そんな『すんっ』てなんなくても……ンな楽しみにしてたのかよ?意外だな、仕事一筋で季節関係のイベントにゃ疎そうに見えるけど」 「そんなことありませんよ、毎年この時期はハロウィン先取りで浮かれまくった人々の補導に駆り出されるので嫌でも季節感を意識させられます」 「マジでか」 「新宿署の留置所なんて酷いですよ、アイアンマンとキャプテンアメリカが史上最強の座を巡って殴り合いの喧嘩をし巻き込まれたアントマンが病院送りに」 「コスプレすんなら心もヒーローでいろよ、ヴィラン堕ちすんなよ……」 「署内でシビルウォー開戦されても困るんですけどね。羽生さんはハロウィンのご予定は?」 「仕事」 「スリを働きなさると」 「イベントある日は財布の紐がゆるゆるになるカモ多いしな。渋谷に行く連中でいい感じに混雑してっから紛れやすいし」 「何故でしょうあなたに手錠を嵌めたくなりました」 「誘導尋問か」 「自爆でしょうただの」 「ちっ……こちとら稼ぎ時なんだ、年に一度のハロウィン位大目に見ろ」 「犯罪者の言い分を聞く義理はないですが、まあいいでしょ。あなたには先日の捜査にもご協力頂きましたしね」 「……自分で言うのもなんだけど、スリの犯罪予告見逃すってどうなの?サツの意識ガバガバだな」 「誤解なさらずに、1人1人から少額抜くのはお目こぼしますが度が過ぎたらお仕置きですよ」 「具体的には」 「1人100円」 「渋っ!?せめて千円に」 「10人から集めれば千円になりますよ」 「小銭は難しいんだよ音鳴るから……」 「なあに羽生さんなら余裕余裕、山手のハブの手腕にご期待してます」 「いまどきコンビニの募金箱だって万札入ってんのに」 「とはいえ真面目な話、ハロウィンは皆で楽しむ日ですからね。それに水をさすような行為は推奨しません、罰当たりですよ」 「へーへー」 「耳ほじりながら聞き流さないでください、不真面目な」 「きゃっ!」 「おっと、お怪我はございませんか可愛い魔女さん」 「あ……大丈夫ですありがとうございます。私うっかりしてて……」 「お悩みのようですが、私にできることならご相談に乗りますよ」 「あの……友達と渋谷で待ち合わせしてて、山手線の乗り場をさがしてるんですけどこかわからなくて」 「謙遜は美徳ですが恥じ入るには及びません、新宿駅はダンジョンですからね、プロでもたまに方向がわからなくなりますよ。さあどうぞ、付いてきてください」 「新宿駅のプロって何だよ……俺?お前?」 「ツッコミが細かいですね」 「さっきの子は電車乗れたのか」 「勿論ですとも、ホームまでしっかりお見送りしてきました。ご友人と無事に合流を果たせれば良いのですが」」 「お前に一目惚れしちまったんじゃねえの、ポーッとしてたぜ。ガワだきゃ無駄にいいからな無駄に」 「やきもちですか?可愛いですね」 「ちげェし嫌味だし。都合よく脳内変換すんなよ」 「びえーーーーーーーーーーーーー!」 「おや子供が転んで泣いています、親御さんの姿が見当たりませんが迷子でしょうか……羽生さん?」 「どうした坊主、大丈夫か」 「ありがとうおじさん……」 「膝は擦り剝けてねェな。そのかっこゴーストバスターズのマシュマロマンか、真っ白くてふわっふわで美味そうだな」 「ベイマックスだよ、おじさん知らないの?」 「すまねえ忘れてくれ、平成生まれとのジェネレーションギャップだ。まあとにかくベイマックス選んでラッキーだったな、クッションのおかげで怪我もねえ」 「孝!」 「お母さん!」 「すいませんうちの子がご迷惑おかけして……一人で勝手にどこかに行っちゃだめって言ったでしょ」 「いや別に、通りかかっただけなんで。見付かってよかったな、じゃ」 「お帰りなさい羽生さん」 「~~~~だからやめろってその生ぬりィ菩薩顔……!むずむずすっから言いてェことあんならハッキリ言え」 「マシュマロンはちょっとネタが古かったですね、現代っ子は知りませんよ」 「リメイクしてたろ後ろから見たフォルムとか完全に一致だろ」 「少し考えたんですが、ハロウィンはネカフェのカップルシート予約してご一緒にゴーストバスターズ視聴というのはいかがでしょうか」 「野郎同士でカップルシート予約して店員に顔覚えられるくれェなら死んだ方がマシ」 「二丁目に良いお店がありますよ、ちょうどここにハロウィン限定ソフトドリンク割引券がありまして」 「何で持ってんの?」 「先日捕まえたキャッチセールスに賄賂として押し付けられたんですよ」 「受け取んなよ……」 「羽生さんはハロウィンに二人きりで過ごすのお嫌ですか?」 「……そうかわかったぞ、ハロウィンが稼ぎ時だとか口滑らせたからネカフェの個室に24時間拘束・監禁・監視する気だな」 「ご名答です」 「はめられた!」 「これから行くネカフェはカラオケルームもあって、着替えて遊べる各種コスチュームが揃っています。警察の制服着てみたくありません?きっとよくお似合いになります」 「お前と並んで引き立て役に成り下がるのはお断り」 「ガワだけでも真人間になってみては?新鮮な気持ちでプレイできますよ」 「ネカフェのカップルシートで致す趣味はねェよ変態か!」 「私は白衣のお医者さまで。専門は泌尿器科と肛門科で迷いますね、羽生さんはどちらのプレイもとい診療がお好きでしょうか」 「テメエは全身真っ茶色で神出鬼没のツチノコの仮装でもしやがれ!」 「山手のハブの宿敵にして天敵たる山手マングースがあえてUMA代表選手ツチノコに擬態する……皮肉の利いた変化球で悪くありません、採用」 「いいの!?」

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