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第9話

車の中は俺が答えなかった質問を恭平さんにする友人と、質問に楽しそうに答える恭平さんとで盛り上がりを見せていた 俺が羞恥でどうにかなりそうで一言も喋らない間に車は駅に着いた 「ありがとうございました、恭平さん!」 「アレクのことよろしくお願いします!」 最後までふざけ倒す友人に頬が熱くなり恭平さんのことが見れない 「はは、面白いお友達だね」 「…ごめん」 「楽しかったよ。アルくん、こっち見て」 恭平さんの言葉に顔をあげると、本当に楽しそうな顔で笑っていてまた恥ずかしくなった 「今日の夜、お友達との遊びが終わってからで良いから会える?」 「…うん」 「何時になってもいいから、連絡して。待ってる」 恭平さんは優しくキスを落とし、俺のシートベルトを外してくれた スマートにそんなことをする恭平さんに度々年齢差を実感するのだ 「いやあ、良い人だった」 「アレクを嫁に出すならあれくらいの男じゃないとな」 入ったカラオケ店の中で、興奮が冷めない様子で恭平さんのことを褒め称える友人 恭平さんってどんなセックスすんの?と下世話なことを聞いてきたため流石に張り倒しておいた 「恭平さん、そろそろ帰る」 「わかった、迎えに行くね」 後ろでデートか?お泊まりか?と煩い友人は放置して恭平さんに電話をすると、そう伝えられ電話はすぐに切れた 恭平さんが来るまで一緒に待ってやる、と言う友人を改札に押し込み俺は1人で恭平さんを待った 「サーシャ?」 「っ、」 家族以外で俺のことをサーシャの愛称で呼ぶのはただ1人 「…わ、たる」 遊びに行った帰りなのか、私服の渉がそこにいた 彼女の姿は見えず、渉1人だった 「何してんの、1人?」 「え、いや、」 「俺、もう帰るんだけど一緒に帰るか?」 久しぶりに会った渉はぐいぐいと近寄ってきて、畳みかけるように話を振ってくる 渉と会うこと自体が予想外で混乱する俺を他所に、腕を掴み駅に歩き出そうとしていた 「待って、渉。俺、」 「すみませんが、この子に何か?」 渉とは反対に強い力で体を引かれ、最近嗅ぎ慣れた匂いと温もりに包まれた 「きょ、へい、さん」 普段の笑みが消え去り、恐ろしい顔で渉を睨みつける恭平さんがそこにいた

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