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第10話
「は、誰?」
「この子の彼氏だよ。君は知り合い?嫌がっているように見えたけど」
「は、彼氏?」
渉は呆然と俺と恭平さんを見比べ、カッとなって俺に掴み掛かってきた
「サーシャ、男が好きなのか?何で、俺とセックスしたから?だとしても、こんな年上の奴じゃなくても、言ってくれれば俺が、」
「止めないか、こんなところで」
恭平さんは掴みかかる渉から俺を引き離し、隠すように俺を抱きしめてくれた
男3人で揉めている姿は周りの目を引き、注目されているのがわかり俺は顔を上げることができず恭平さんの胸に顔を埋める
「っ、サーシャ、帰るぞ!」
「やっ、」
「余りしつこくするなら警察を呼ぶ」
恭平さんの言葉に渉は悔しそうに顔を歪めると、後で行く、と俺に言葉を残しその場を去っていった
恭平さんは周りの目から隠すように俺に上着を掛けてくれて、肩を抱かれて車まで歩いた
「アルくん、飲める?」
助手席で泣きじゃくる俺に渡されたペットボトル
恭平さんが近くの自販機で買ってきてくれたようだ
せっかく買ってきてくれたが飲む気にならず、俯いて泣き続けた
恭平さんは俺の頭を撫で、シートベルトを締めると運転席に乗り込み車を走らせた
無言で車は進み続け、俺の啜り泣く声だけが響く
渉は先程何と言っていた
『言ってくれれば、俺が』
その先に続く言葉は何だったのか
どうして渉はあんなに動揺していたのか
答えの出ない疑問が胸に溜まっていき、俺は渉のことばかり考えていた
「アルくん、着いたよ」
見慣れない駐車場に車を停める恭平さん
いつものように助手席側に回ってエスコートしてくれた
その手を取って車を降り、手を引かれながら歩く
その間も2人の間に会話はなかった
「ここ、俺の家なんだ」
そう言い乗り込んだエレベーターの最上階を押す恭平さん
24歳の社会人がこんな高そうなマンションに住めるのか、と場違いにもそんなことを考えた
家の中もとても広く綺麗で、入るのを躊躇われる程だった
「ここ座って」
恭平さんに促されフカフカのソファに座る
俺の涙もようやく止まり、泣きすぎたせいで頭が少し痛くなってきていた
「はい、これで冷やして」
渡された冷タオルで目元を覆うと、熱を持って腫れぼったくなっていた瞼と痛みを訴え始めた頭がすっきりとして気持ちが良くホッと息を吐く
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