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恭平end

「い、やだ!」 突然暴れ出した俺に渉は動揺し、その隙に俺は渉の下から抜け出る 「どうした、サーシャ」 「俺、やっぱり恭平さんがいい」 「は、」 渉は信じられないと言うように目を見開き固まった 「恭平さんは俺に優しくしてくれた。俺の心も体も、大切にしてくれた。渉のことは好き。でも、それよりも恭平さんのことを好きになりたい…!」 惚ける渉を置いて、服を整え部屋を飛び出した 走りながら恭平さんに電話を掛けていると雨が降り出してきてずぶ濡れになったが構っていられない 「はい」 珍しく三回程コール程鳴らした後、恭平さんの声が電話越しに聞こえホッと息を吐く 「恭平さん!」 「…ついに俺は振られるのか」 「え、」 「渉くんと仲直りできた?」 「恭平、さん」 「もう好きでもない相手と寝ちゃダメだよ」 「恭平さん!」 諦めたような声で呟く恭平さんの言葉を遮り、思いの丈をぶちまけた 「俺、恭平さんを好きになりたい」 「え、」 「渉のことは好き。産まれてからずっと。でも、恭平さん程俺を大切にしてくれる人は他には居なかった。恭平さんが俺を愛して、優しくしてくれた分、俺も恭平さんを愛したい」 俺が伝え終わると、恭平さんも俺も黙り込みしばらく沈黙が続いた 「アルくん」 「…うん」 「さっき言ったよね。俺を選ぶなら、もう逃してあげないって」 「うん」 「俺、嫉妬深いよ」 「そうなの?」 「アルくんにより年上だから、って見栄を張っていただけ。本当は嫉妬深いし、甘えたがりだし、泣き虫だし、料理下手だし。カッコ悪いとこばっかり」 「それでも、俺は恭平さんがいい」 「…今どこ」 「駅前」 「すぐ行く」 抱きしめさせて、と恭平さんの言葉を最後に電話は切れた 恭平さんが来てくれる、それだけで鼓動を早める自分の心臓に笑みが溢れた 俺はすでに、彼のことが 「アルくん!」 乱暴に車のドアを閉め、駆け寄ってくる恭平さん 濡れるのも構わず俺のところまで来て、思い切り抱きしめてくれた 「恭平さん、好きになってくれてありがとう」 「っ、」 俺の言葉に腕の力を強めた恭平さんの肩が震えているから泣いているのかもしれない 俺より7つも年上の恭平さんが泣いている、と思うとなんだかとても愛しく感じて 俺も恭平さんの背中に腕を回し、強く抱きしめた 駅前でずぶ濡れの体で抱き合う男二人に街ゆく人は怪訝そうな顔をしていたけれど、俺達は満足いくまでお互いの温もりを感じていた

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