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第5話

「なに言ってるんだ、だめに決まってるじゃないか……よく考えろ、兄弟でおかしいだろ!母さんが言ったこと忘れたのかよ、これからは俺たち2人でやってけって、俺とお前は兄弟だから、俺は兄さんだから……しっかり面倒見るって約束したんだ、約束したんだよ」 スワローと番になってスワローの子供を産む。 そんな事が許されるわけがない。男と男である以上に兄と弟でタブーを犯せるはずがない。 消えた母がそんなことを望んでいるはずがないし養い親の神父だってきっと幻滅する、なによりピジョン自身が受け入れ難く理性と良心で拒んでいる。 「ぐだぐだうるせえな、ンなのどうだっていいじゃん。俺は今すぐやりてえんだピジョン、お前の喉に噛み付いて俺の物だってしらしめてェ、そうすりゃあんなグズどもハナからよってこねえで手間が省ける、お前だって食い物にされずにすんでいいこと尽くしじゃねェか」 スワローはどうかしている。 ピジョンが最初の発情期を迎えた頃から変わってしまった、家の中でも外でも顔さえ合えばすぐ求めてくるようになった、強引に押し倒してくるようになった。 俺がΩだから。 Ωなんかに生まれたから。 俺が所かまわずいやらしい「匂い」を撒き散らすから、とうとうスワローまでおかしくなってしまった。 「お前おかしいんだよ、正気じゃないってわかれよ、じゃなきゃ俺なんかに興奮するはずない……俺の匂いのせいでっ、俺がヒートだから、だからお前おかしくなってるんだ。な、頼む、いい子だから離れて話聞けって。お前は兄さんに欲情するような変態じゃないだろ」 なんでよりにもよって俺なんだ、Ωなら他にいくらでもいるのに。 「兄弟で番になるなんて絶対おかしい、神様が許さない」 「でたよ神様かぶれ。気持ちいいならそれがオンリーワンの正解だ」 なんで俺たちはαとΩに分かれてしまったんだ。 おなじ血を分けた兄弟なのに、不公平じゃないか。 「やめろ離れろって」 スワローをおかしくしたのは俺だ、俺なんかがそばにいるからなにもかもおかしくなった。 俺がΩでさえなければ、ヒート中に厄介な「匂い」を撒き散らさなければスワローは道をあやまたず選ばれたαとしてパートナーと幸せな人生を歩めたはずなのに。 「おい聞いてるのかよしまいにはホントに怒るぞ、お前は今冷静じゃないんだ、俺からだだ漏れの匂いのせいで我を失ってるだけだって気付けよ!!」 噛み癖の悪さに腹を立てスワローをひっぺがせば、劣情極まって切羽詰まった顔で見詰めてくる。 「やらせろ兄貴」 「お前の女になんかなりたくない」 「また襲われてもいいのかよ」 「助けてくれたのは感謝してる、でもそれとこれとは別だ。お前と番になって孕まされるのは絶対にいやだ」 お前は俺の弟で 大事な弟で。 「わかってくれよスワロー、頼む」 Ωとαが番として結ばれる宿命でも、兄と弟で子供を作るタブーを犯すのは断じて受け入れられない。 「俺たち体の相性ばっちりだろ。俺のキスが誰とやるより一番気持ちいい癖に、なあピジョン素直になれよ俺に乳首噛まれんのが一番いいだろ、先っぽ擦られただけでビュクビュクする癖に強がるなよ、番になりゃ一生気持ちよくなれるんだぜ、イってイってイきまくって絶頂で孕んじまえばいいじゃん」 「スワロー……っ、頼むから、いやだ、いやだ……」 ピジョンが半べそで嫌がれども諦めず、何度顔を背けても喉とうなじを付け狙うのに絶望する。 遂にピジョンは口走る、スワローが決定的に萎える一言を。 「かあさん……」

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