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目が合った途端 「君、名前は?」 ニコニコ近付いて来た王子。 [シンデレラ、王子ですよ?] 魔法使いに言われ 『おっ、コイツが王子か。モヤシ体型だけど能ある鷹は爪を隠すって言うしな。隠れマッチョで意外と強いのかも』 戦闘モードに切り替えた。 「可愛いですね。差し障りがなければ、一緒に踊ってくれませんか?」 ふわり差し延べられた手。 『おっ、コレは戦闘開始の挨拶か?』 キラリ目を光らせ 「是非喜んで」 握手し、そのまま力を込めた。 「なら最初はコチラから行かせて頂きます」 ニッコリ笑いかけると、TVで観て覚えたての技をかけた。 『ふぅ~、スッキリしたぁ』 見よう見真似でしたのだが、想像以上に決まった一本背負い。 ドシンッ、小気味よい音と共に王子は床に叩き付けられ目を回した。 って、あれ? なんかスッゲェ弱くね。 コイツ一番強いんじゃねぇのか? パチクリ瞬きをすると 「あいたっ!?」 ゴンッ、頭部に感じた鋭い痛み。 見上げると 「お前何やってんだ?バカ」 「留守番はどうしたんだよ?」 義理の兄達が居た。 「えっと、格闘技?」 「はぁ?」 「だって今日武道をする会なんでしょ?」 「馬鹿だ阿呆だとは思ってたが、此所迄とは」 え? 「舞踏会とは皆で集まって踊ったり楽しんだりするパーティーの事だ。決して格闘技を楽しむパーティーではない」 呆れながら言い放つ義理の父。 知らなかった。 それならそうと先に教えてくれよ。 鍛えて損した。 ていうか、王子大丈夫か? 「すみません王子」 慌てて駆け寄ると 「素晴らしい」 キラキラ輝いた瞳。 は!? 「美しいだけでなく強いなんて。まさに理想の女性だ。是非私と結婚して下さい」 はぁあぁあぁあ!? ヤバイ。コレ絶対頭打ったヤツだ。 「却下。逃げるぞシンデレラ」 は? って、ちょっ、何??? ガシッ、肩に担がれた身体。 せめて姫抱きでお願いします。 そのまま家族全員で走り出された。 で、帰宅するなり 「ほんっとお前馬鹿だろ?」 始まった説教。 ていうかあれ? なんか靴片方ないぞ? 「靴忘れた」 「って、今そんなのどうでも良いだろ?」 「すみません」 「なんでそんな可愛らしい格好で来るんだよ?お前は自分の事に関して知らな過ぎだ。もっと危機感を持て」 危機感? って、なんだ? 「だから今日は留守番って言ったんだ」 「何の為に今迄コンビニとスーパー以外に行かせなかったと思う」 「王子に気に入られたらマジ最悪だし」 はい!? 皆さん何言ってんですか? 「取り敢えず着替えて寝ろ。起きたら続き話すからなっ」 キツく言い放たれ自室に戻された俺。 部屋に入るなり 「あの、もうコレ外して良い?」 尋ねると 「すみません。余りの恐ろしさに助けれませんでした」 魔法使いが現れた。 ピアスを外した途端消えたドレス。 全裸になってしまった。 って、うっわ、コレ人前で外さなくて正解だったよ。 マジ危なかった。 ピアス外した途端ドレス消えるなんてさ、どんな魔法? 「舞踏会を武道会だと勘違いするなんて、面白い人ですね」 クックックッ、楽しげに笑われ 「悪かったなバカで」 少しキツく言葉を発した。 ああ、ほんっと俺ってばバカだなぁ。 「結果がどうあれ舞踏会に行って王子に逢えたのだから願いは叶いましたね」 う~ん、そうなのか? 「なので1つお礼を下さい」 って、ぇええっ!? 無料じゃないの? 「すみません。一応営業ですから」 先に言ってよ、もぉ。 「先に言ったら断ったでしょ?」 はい、速攻で。 「だから今言ったんです」 商売上手だなコイツ。 「言っとくが俺金無いぞ」 賞金貰えなかったしさ。 「知ってます」 なんか人に言われるのってムカつくな。 「なら何で払うんだよ」 「身体で」 って、はい!? 「臓器は嫌だぞ?せめてきちんと寿命で死んでからにしてくれ」 「あの、死神じゃないんでソレは遠慮します」 良かった。 命と引き換えとかマジシャレになんないもんな。 「舞踏会の前、お風呂でした事覚えていますか?」 何かしたっけ? 「あの時は時間無かったので上半身だけでしたが、今は時間制限ないので、続きさせて頂きます」 続きって、なんだ? チュッ。 ん、何だ?今の。 なんか唇に違和感あるぞ。 スッゲェ顔近いし。 「キスは初めてですか?」 って、コレキスかよ。 何してくれてんだ変態。 俺のファーストキスを返せ。 「物凄く光栄ですよシンデレラ」 こういう時は心読まれるの屈辱だなぁ。 「折角だからこのままバックの初めても頂かせて下さいね」 [バック]って何だ?鞄の事か? キョトンとしたまま見上げると 「ゃっ」 触られた胸元。 キュッ、キュゥゥーッ。時折強弱を付けながら軽く弄られ 「んぁ」 変な電流が身体を流れた。

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