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7.
唇だけでなく舌迄這わされて
「うぇえええーーーんっ。誰か助けろよぉっっ」
大声で助けを呼んだ俺。
ヒックヒック。まるで小さな子供みたいに泣き出した。
「えぇっと、シンデレラ?」
「ヤダ。もぉ触んないでぇっ」
うぇ~ん。
「あっ、あのぉ」
泣きじゃくる俺にちょっと引いたのか、下半身から退けられた手。
でも怖さは変わらない。
何されるか分からない恐怖で涙が止まらない。
「シンデレラ」
指が顔に近付き
「嫌ぁーーーっっ」
怖くて叫んだ瞬間バンッッッ!!開けられたドア。
「何処から入って来たんだ?お前」
「勝手に我が家の所有物に手を出すなんてさ、お前殺されたいわけ?」
「ていうか、消えろ」
俺の叫びが聞こえたらしく、現れた義理の兄と父。
「えっと、私はその」
「言い訳なんて聞きたくないんだよ。警察呼ぶから覚悟しやがれ」
般若さながらの怖い顔付きで魔法使いは睨まれ
「いや、流石にそれは」
顔面蒼白。
まさに蛇に睨まれた蛙状態だ。
って、この例えあってんのか?
「捕まっちゃったらその、俺仕事クビになるんで」
おい仕事って、今それ所じゃないだろ?
ていうか、私が俺になってるぞ。
「へぇ~警察は嫌なんだ?」
いや、それは誰だってそうだってば、多分。
「なら仕方ないな。英治、コレやる」
「ぇえ~っ!?俺可愛い子専門なのにぃ」
「まぁ、食わず嫌いせずにさ、たまには趣向変えてみんのも良いんじゃね?」
えっと、何の話をされているのでしょうか?
「そうだね。いつもは可愛い子を苛めてるけどさ」
[苛めてる]って何!?
「明らかに攻めな奴を調教して無理矢理自分好みにすんのも悪かないかもな」
[調教]!?
[無理矢理]!?
って、何、何?
なんだよその摩訶不思議な会話は。
「て事だからお前今日から俺の下僕な?」
「ちょっ、何言って!?」
「口答えすんなよ?俺スッゲェ気ぃ短いから」
「えっ、ちょっ、俺タチ専だからぁーーーっ」
パタンッ。
無理矢理引き摺られ部屋を去って行った魔法使い。
部屋には義理の兄・孝治と義理の父・快治が残った。
なんかスッゲェ気まずい。
ていうかさ、さっきの義理の兄2人の会話は一体何なんだろう?
魔法使いも[タチ]がどうこう言ってたしさ。
全然ワケ分かんないぞ?
「シンデレラ」
ビクゥッ!物凄く低い声で名前を呼ばれ震えた肩。
「何簡単に身体触らせてんだよ?」
「ついさっき危機感持てって教えたばかりだろ?」
うっ、怖いです。
「言っても分からない馬鹿な子にはお仕置が必要だな」
はい?
「だな。でも親父は手ぇ出すなよ。コレ俺のだから」
は?誰が誰の物だって?
「ったく、狡いなお前は。俺だって溜まってんだぞ」
[溜まる]って何?
ストレスか。
それなら俺のが大きいぞ?
「親父は今日城で知り合った奴で妥協しろ」
「う~ん。なんかスッゲェ厚化粧のばっかでさ、萎えた。やっぱ素顔でも可愛い奴じゃないとな」
「あ~確かに今日のはケバかったな、マジで」
「だろ?だから余計今日は我が家が一番って感じ。マジ癒されるしな」
「同感」
ん?
一体何の話してんだ。
サッパリワケ分からないぞ?
「折角お前の邪魔しない為に張り切って物色しに行ったのにさ、マジ無駄足だったよ」
?
「まぁ、今日は仕方ないんじゃね?王子の花嫁探しだったんだしさ?」
えっ、そうだったのか?
話に着いていけない俺。
交互に2人を見上げながら耳を傾けた。
う~ん、全く理解不可能なんだけどさ、話纏めると。
どうやら今日は王子の花嫁探しで、義理の兄達は義理の父の再婚相手を物色する為皆でお城に行ったらしい。
沢山の女性が集まるのならその中に好みの人が居るのでは?と期待したがダメだったって事。
確かに派手な女性多かったけどさ、綺麗なのや可愛いのも沢山居たぞ。
もしかして義理の父理想高いのか?
「スッゲェ身近に完全理想の奴が居たらさ、なかなかそれ以上のには出逢えないんだよ」
「あ~分かる分かる。此所迄最高の上玉なかなか居ないもんな」
えっ、誰の事言ってんだろ2人共。
「だからさ、共用じゃダメか?」
「いくら親父でもそれだけは許さねぇ。もしほんの少しでも触れたらさ、速攻で去勢するぜ」
はぃい!?
ほんっと一体何の話してんだよ?2人共。
俺完全蚊帳の外じゃんか。
クックックックックッ。
ぇえぇ~!?
何、何~?
何なの?
なんで突然義理の父笑いだしたんだよ?
「お前本気で惚れてんだな」
「嗚呼」
「繁殖は無理だぞ?」
[繁殖]!?
「んなの養子かペット飼えば良いだろ?」
う~ん。
ほんっと何話してんのかサッパリだな。
「なら一生普通の結婚はしないって事だな?」
「まぁそうなるな」
「覚悟は?」
「んなの一目惚れした時点で決めている」
え、孝治好きな人居るのか?
なんか義理の父も同じ人が理想とか言ってたしさ。
その人って一体どんな人なんだろう?
でもさ、なんか同情するな。
最強美形だけど、最悪と言って良い位コイツ等性格悪いからさ?
って、ん?
なんで2人して俺を凝視するんだ?
顔、何か付いてんのか?
「シンデレラ」
真剣な顔で見詰めながら孝治に名前を呼ばれ
『え?』
ゾクリ背筋が震えた。
なんか激しく嫌な予感がするのは気のせいでしょうか?
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