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第22話 無口な唇

 起立、礼、着席、たったそれだけを言うのに二日も前から練習する星乃が可愛いなぁって思った。 「あっ……間宮、クン」  まだ全員座ってるのにテンパって「着席」なんて言っちゃう自分を想像しただけで腹が痛くなるって真っ赤になった星乃がさ、可愛いって思った。 「あ、あ、あ……」  この星乃の真っ白でぺったんこな腹が痛くなるって。  そんでさ。 「星乃……」 「あ、あのっ」  ズボンんとこ、張り詰めてる。 「あ、ぅんっ!」  勃ってるそれを曲げた指でそっと撫でたら、飛び上がるくらいにキュッと身体を縮めて、その拍子にメガネがズレた。俺の腕にしがみ付きながら、撫でられる度に身体を小さく丸めて、小さく声を溢して。  ど……しよ。 「間宮クン」  クソ可愛い。 「ふぅっ……ン」  服を捲っただけで困ったような顔をするんだ。真っ赤になってさ。唇をキュッと結んで。ズボンの前を寛げて、下着を少し下へとズラすと恥ずかしそうに俯いた。ヘソんところにあるホクロをちょっとだけ押して、そこを撫でると星乃が肩を揺らして、吐息を溢す。敏感っぽい。ヘソんとこ。 「あっ……」  真面目だから、男子校ではフツーに行われてるスキンシップって言ったら信じた。  真面目だから、誰ともこういうことをしたことがない星乃の、それはピンク色で。そんなピンクを握ると、ちゃんと硬くて。  えっろい動画とか見るだろ? そしたら、まぁモザイク越しでも見かけるじゃん? 男性のシンボル的なの。でもそれを見て興奮なんてしたことないし、ましては触ってみたいなんて思ったこともない。もちろん握って扱くとか当然無理。 「星乃……」  けど、星乃の触りたい。  ピンクに触りたい。 「あぁ!」  下着ごと、ズボンをずり下ろして、しっかり勃ち上がってるそれを上下に扱くと、その瞬間に、無口でさ、ほとんど喋らないあの無言な唇が可愛い声を溢すんだ。 「あ、あ、あ、あ」  俺の手の動きに合わせて。開いて、声上げて、気持ち良さにキュって結んで、また開いて。 「あ、あ、間宮クン、のも、しな、と」  俺のもしないと、男子校のスキンシップにならないから。律儀な星乃が俺のルームパンツの中へと手を伸ばす。不器用なのか、俺のを上手に触れなくて、下着ごとズボンを引きずり下ろすのもできないから、俺が自分で引っ張って下に下げた。そしたら、飛び出たそれに真っ赤だった頬がもっと赤くなった。 「い、一緒に」 「っ」  握られたら、電気が走った。  ビリビリって、星乃の指先に感電した。  くちゅくちゅって、部屋に甘い音がした。 「カウパー……」 「ぇ? かう……」 「我慢汁、星乃、出るんだな」 「出、ないの? ごめっ、あのっ」 「ヌルついて気持ちいー」 「あっ、ンっ」 「だろ?」  くちゅりくちゅりって、やらしい音を立てて、星乃が握ってくれてる俺のと、俺が握ってる星乃のを全部一緒くたに握って、手を繋いで、このあいだみたいに全部。 「あ、あ、あ、あ」  梨の甘い香りがする。 「あっぅ……間宮、クン」 「うん」  ほとんど喋らない星乃の唇から甘い香りと。 「間宮クンっ」  甘い声。 「あ、あ、あ、あ、俺っ、俺っ」  甘い。  美味そう。 「あ、あ」 「カリんとこ、好き? ここ擦るられると、すげぇ反応してる」 「か、狩」 「カリ、ここ」 「ひゃあぅ!」  なにそれ、クソ可愛い。 「カリ首んとこ」 「あ、狩、首っ」 「擦ると、カウパー溢れる」 「かうぱ……あふっ」  辿々しくて、エロから程遠い感じの星乃の敏感なピンクがやばくて。 「な? 鈴口んとこは?」 「すず」 「先っぽんとこ」 「先……ぽ」  話す度にリピートアフタミーで一生懸命言いなれない単語を口にする星乃が可愛くて。  話す度に甘い林檎の香りと、甘い声と真っ赤な唇が美味そうで。 「星乃」 「あっ、う……ん、間宮クン」  キスしたくなる。  キスがしたくなる。 「星乃」 「ぅ、ん? 何っ」 「キス、したことある?」  キスしたい。  キスがしたい。  星乃にキスがしたくて、したくて。したらダメかなって思って。 「ない、よ」 「だよな」  我慢できそうになくて。  キスしたい。  星乃の無口な唇に。  すげぇ、キスしたい。  したくて、したくて。 「んっ」  だから、指で触れた。 「あ、ふぁみや、ク、ン」  指の関節のとこ曲げて、星乃の唇に触れたら、柔らかくて、濡れてて。 「ふぁっ」 「やば」  ゾクゾクってした。だって、星乃が触れた俺の指をちゅって吸ったから。その柔らかくてやらしい感触がすごくて、なんか、もう。 「ん、んんんんっ」 「っ、イクっ」  達したのはほぼ同時だった。  星乃が俺の指を少し吸いながら、俺はその唇のやらしい柔らかさに絆されながら、二人で握り合った手の中でびゅくりと弾けて。 「ぁ……間宮クン」  指を離すと、透明な糸が指の曲げたところと星乃の無口な唇を繋げてた。 「ごめっ」  それがたまらなく可愛くて。 「指に俺のヨダレがっ」 「……っぷ」 「あのっ」  いっつもほとんど喋らないその口が零した「ヨダレ」って単語も、その心配事も可愛くて、可愛すぎてさ。もう梨の甘い香りはとうに消えたはずなのに、星乃から甘い甘い美味しそうな香りがした気がしたんだ。

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