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第43話 あーだこーだ
「は? 一人暮らし?」
「そ、マジで探してんの」
「あー、まあ、そうなるかあ」
澤田が薄くなってそうなメロンソーダを一気飲みした。 車で来てるからアルコールはなし。そんで真冬に夏っぽいメロンソーダ。
「少し金も貯まったし」
俺は澤田に遠慮することなくレモンサワー。 職場からそのまま澤田と待ち合わせた駅前のファミレスまで来たんだ
だから、俺は徒歩。
今日は静が出張だから。
「ふーん……」
お客さんとこで打ち合わせに同行なんだってさ。 午後から。
――あ、いってきます。
昼休憩が終わったらすぐ出発って言ってたから、ちょうど遭遇しそうなタイミングを見計らって小さな食堂から現場に向かって、そんで予想通りに現れた静へあの個包装になってたラムネをあげた。 前の、飴と間違えて買ったラムネが残り三つになってたから。
――行ってらっしゃーい。
三つ全部食ったかなあ。
あいつ、腹痛くなって。
「あ」
ずっと気にしてたスマホがようやくズボンのポケットの中でブブブって震えた。
「俺、そろそろ帰るわ」
「おー、彼女さん?」
「ああ、今日、仕事で少し遅くなるつってたんだ」
「ふーん、じゃあ、俺も帰っかな」
作業服を突っ込んだリュックを肩にかけてファミレスを出ると一段と寒さが増していた。澤田は出てすぐのとこにドヤ顔で停めておいた愛車に乗り込んで、俺らはそこで「そんじゃあ」 って別れて、俺だけそのまま駅へと小走りで向かった。
――今、帰ってきて、駅に着きました。
小走りで向かいながら静がしゃべってる時とそっくりなぶっきらぼうさで送ってくれるメッセージに短い返信を打ちながら。
――今、向かってる。 駅んとこにいて。
そう送ったメッセージにどんな顔で、どんな風に駅んとこに突っ立っているのか想像して、少し笑いながら小走りのスピードをちょっと上げて。
駅に辿り着くと、静が寒いのかドキドキしてんのか、どっちかわかんないけど肩を小さく縮こまらせて、じっと困ったように駅のとこに立ってた。そこは予想通りだったけど、予想が外れた部分もあって。
「お疲れ」
「……あ」
まず服装。昼飯後、すれ違った時は作業服にスーツのズボン姿だったのに、帰ってきたら、もこもこしたカーディガンにマフラー姿だった。
「穂、穂沙クンもお疲れ様、です」
あと、予想が外れたのは、静がはにかみながらも笑ったこと。
「お、おぉ」
駆け寄る俺を見つけてふわっと笑って、そんで、その笑った顔が埋もれるくらいのぐるぐる巻きのマフラーにニットカーディガンっていう格好のあどけなさが、なんていうか、ハンパなくてさ。
俺がドキドキしてた。
普段、職場も同じで近所だから、待ち合わせなんてあんましたことなくて、不慣れなことには全部ドキドキしそうな静よりも、もしかしたら、俺の方がずっとドキドキしてた。
「腹、どうだった?」
「あ、平気、だった」
「マジで?」
「ラムネが」
「あはは、効いた?」
「うん」
コクンって頭いて、静が無事おとなしくしててくれた腹をぎゅっと萌え袖で掴む。その仕草がなんか思わず手を伸ばしたくなる可愛さで。
「俺のハンドエナジー込めまくっておいたから」
フヨって笑ったりとかするから、なんかさ。
触りたいって思ったんだ。
だから、足んない皺少なめな俺の脳みそフル回転させて、あーだこーだって理由探して。
「それ、サイズ合ってなくね?」
絞りだして見つけたあーだこーだな理由を言いながら、どさくさまぎれに手に触れた。
「あ、これは」
「ほら、でかいじゃん」
「あ、あの伸びちゃって、洗濯したら」
「ヘー」
「で、でも作業服着てれば見えないからいいかなって」
あ、手、引っ込められた。
たしかに会社を出る時は作業服の上だけ羽識ってたもんな。 その時はたしかにわかんなかった。
「あの」
「寒くね? すぐに腹痛くなるのに薄着じゃね?」
だから、今度は手を離されないように、しっかり握ろう。
「こ、これは、あ、の」
萌え袖からちょっとだけ見える指先はしっかり掴んでないとすぐに引っ込んで逃げられそうだから。 ぎゅってさ。
「高校生の時、こうしてる子が好みだって……言ってたのを覚えてて」
真っ赤になってそんなことを言う静をぎゅって。
「え?」
「さ、澤田クンと教室で好きな子の話しててっ、それで、そんな話してたの覚えてて。あの、キモくてごめん、俺がやってもそんなの」
「キモいわけねぇじゃん」
「……」
「ねぇじゃん」
指先を引っ込められないようにぎゅって握った。
その俺の手を静の萌え袖からわずかに出てる指先がぎゅうってしがみついてくれて。
あったかくて。田舎の街灯の少ない暗い夜道じゃわかんないけど、たぶん、頬っぺたを赤くした。 俺も、静も。
それさ。
「あっ! っ……っ」
それは、めちゃくちゃ俺好みって、さすがに教室では話してなかったと思うんだけど。言ってたっけ? 俺も澤田もバカだから時と場所なんて考えもなしに言っちゃってた? それ。
「んんんっ」
すげぇ可愛い。
えっちん時にぎゅって萌え袖握りしめてるの。そんでその手で一生懸命にロ元を押さえたりなんかして。
高校生みたいな格好の静が俺に抱き上げられるように跨って、下から貫かれて気持ちよさそうに中を締め付ける。
「声、我慢な。静」
声を我慢って言うくせに、静の好きな、中の気持ちいいところばっか狙って揺さぶって下から突き上げると、ブカブカなカーディガンが細い肩から滑り落ちそうだった。
「う、んっ」
いつもは聞きたくてたまんない静の甘い声だけと、今日は我慢大歓迎って思う。 突き上げる度に零れ落ちそうになる声に慌てて、その萌え袖で声を止めようとロ元を押さえるから。それが可愛くて、もっと見たくて、弱いとこばっか攻める。
「あっ、穂、沙っ、クン」
「静、こっち」
止められそうもないんだ。 乱れる静が想像以上に可愛いからもっと激しくして、もっと乱れたところが見たくなる。
「や、ぁ……激しっ」
だって激しくしてんだもん。
「静、こっち」
萌え袖をそのロ元から引き離すとそれをそのまま俺の首にしがみつかせた。
「あっ!」
声まで可愛いからさ。
「ん、んんんん」
その口元に齧り付くようにしながら、メガネを壊さないようにテーブルに置いて、静を床に押し倒してきつく抱き締めた。
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