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君と旅行編 4 君って普段静かなのにね。

 湯気のせい、だけじゃなく。 「ん……」  もう何回もしてるのに、それでもただ唇に触れるキスひとつに頬を赤くしてる静が可愛い。 「穂沙ク……っ」  名前を呼ばれて返事をするみたいにまたキスをすると、キュッと肩を縮めて、足をぎゅっと抱えてる。その湯からはみ出てる膝小僧すら可愛くて。  ヤバいね。 「あ、の……」  もうさ。 「出よっか」 「え、ぁ……けど、あ、あのっ、僕っ……」  そこで、真っ赤なトマトになった。  ポカンって口開けて、そんで、俺のさ、そこを見つけて、ぎゅーって唇結んでる。  そりゃ、そうなります。  好きな子と裸でキスして良い雰囲気になっちゃったら、そうもなります。  そして、静は自分のが見えないようにって、身を固くしたから。 「!」  近くに置いておいたバスタオルを腰に巻き付けてから、今度は静の手を掴んで引っ張り上げて、大慌てな君をもう一枚のバスタオルで包んだ。  そっとでっかいタオルで肩からまるごと包み込んであげた。そのことに目を丸くして、こっちを見つめるのすら可愛くて。 「メガネ、俺持っててあげるからさ」 「……ぇ」 「手」 「……はい」  小さく返事をして、頷いて、俺の手をキュッと握ってくれる。ちょっとの距離でも手を繋いでたくなる。  もう片方の手は自分を隠すように包み込むバスタオルが落ちちゃわないようにって、しっかりそれを手で掴んで、恥ずかしそうにしてる静が可愛くて。  部屋の扉にあった毛足の長いマットが雫で濡れた。 「メガネ、ここに置く」 「ぇ」 「テーブルのとこ」  あ、はい、って返事をする静の長い前髪が濡れてた。雫が鼻先に落っこちて、そのままそこからぽとりと床へと着地する。二つ目の雫は睫毛に落ちて、びっくりした静の瞬きで温泉饅頭よりもツヤツヤなほっぺたに伝って、コロコロ転がって、華奢なあごのラインをなぞって、落ちた。 「ありがと」 「……うん」  変な感じ。 「穂沙クン?」  浴衣エロ、したかったんだけど、な。  ほら、男子の夢じゃん?  浴衣着てさ、帯で「あーれー」は流石になくても、帯だけで留まる乱れた浴衣って、男のロマンじゃん? 肩から滑り落ちる浴衣とかさ、ハラリと捲れると破廉恥極まりなくてエロス溢れる太腿がお目見えとかさ。 「あ……の……」  そう言うのすっごい楽しみにしてたんだけど、ね。 「えっと」  なんか、浴衣えろ吹っ飛んだ。 「あっ……っ」  タオルに包まれた裸の君の淡くて優しくて柔らかい色気にさ。裸で、でも、色々恥ずかしくてタオルでしっかり隠してるとこも、この後、エッチするはずなのに、じっと見つめてるだけでなんもしてこない俺に、どうしたらいいんだろうってちょっと困ってる感じも。  なんもかんも、いい感じで。 「……っ、あの」 「男のロマン」 「へ?」  吹っ飛んだんだ。 「浴衣」 「え? あ、浴衣」  浴衣エロがさ。 「えっ……あの」 「なんでもない。静がとにかく可愛いから」  吹っ飛んだんだ。 「触りたいなぁって」 「……ぁ」  そして、静がそっと、バスタオルの中から手を伸ばした。 「ど」  ど? 「どうぞ……」  そしてその手は俺の手をバスタオルの中ヘと引っ張って。 「触って……い、よ」  平べったくて、柔らかくて、温泉でしっとりしたお腹へ俺の手を押し付けた。  静のお腹って不思議な触り心地なんだ。女子ほど柔らかくなくて、けど、俺みたいには硬くなくて。他は知らないけど。他の男の腹触りたいなんて思わないだろ。だから知らないけど。 「髪、あんま濡れてないけど、一応バスタオル敷いとく」 「あ、はい……っ、ン」  けど、静のお腹は触ってたくなる。  そのバスタオルの上に座って、でもまだ、恥ずかしいのかマントみたいに羽織ったタオルを握ったまま、タオルの中でお腹を撫でられる度に身体を丸めて。 「ンっ……」  やば。 「あっ」  お腹をくるくる撫でてから、そっと、触れた。 「ひゃっ」  慌ててる。 「ン、あっ」  どうしたらいいんだろうって困ってる。 「んんんっ」  キュッと手で強く握ると、肩を縮めて、そんで俺の手の中から濡れた音。 「静の顔見たい」  そんな丸まってたら見えないんですけどって、タオルの中で縮こまって隠れたまんまの静を俺が隠してあげるみたいに脚で挟んで、抱っこみたいに囲った。 「っ」  素直に顔を上げてくれる。すっげぇ、恥ずかしいですって顔で、唇キュッと結んで。俺の手の中でビクビク跳ねながら。 「穂沙、クンっ」 「うん……」 「あっ」  カウパーでトロトロになった手でもっとしっかり握ってあげた。 「あのっ」 「うん」 「あ、あ、あっ」 「気持ちい?」 「あっ」  コクンと頷く静のおでこにキスをして。 「あ、あ、あ、ダメっ」 「うん」 「でちゃ」 「うん」  頬にもキスをして。 「あっ!」  首筋にキスをした。 「ぅっ、ン、あっ」  そして小さく可愛い声を上げた瞬間、キュッと身体に力を入れて、そして、びくんって跳ねた。 「出ちゃう」  いいよ。 「あ……出ちゃうよ」  出ちゃっていいよ。 「あ……ン」  気持ちい? 「穂沙……クン……」  うん。 「出ちゃう」  うん。 「い、あっ出ちゃう、出ちゃう、よ」 「いいよ。出して」 「あっ!」  片手で静のを、もう片方の手で、イク寸前、ビクビク跳ねるお腹を、そっと撫でた。普段、あんまり話さない、話しても小さな声の静が何度も何度も、出ちゃうからと困ってさ、何度も俺の名前を呼ぶのが可愛くて。 「あぁっ」  愛しいなぁって。  その、唇にキスをした。

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