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第5話 リョウとドライブ
どうしてこうなったか僕にもさっぱりなんだけど。
僕とリョウは海を目指してドライブ中だ。
久しぶりの潮風を楽しみに僕は心が浮き立つのを感じた。
僕はチラッとハンドルを握るリョウを見た。とてもさまになっている。
僕なんかまだ免許も持ってないのに。
「リョウは結構運転するの?」
「んー、そうかな?ドライブは結構好きだから、遠出は車で行くことが多いかもね。たっくんは免許無いんだっけ?」
「ん。今度の夏休みに免許合宿で取る予定だよ。」
リョウはしばらく黙ってからボソっと言った。
「なんか、たっくんを知らない奴らの中に放り込むの心配だな。…襲われたりしないかな。」
僕は思わずリョウを二度見した。お前が言うなとツッコむところだろうか。
ていうかほんと何で僕、いわゆるドライブデートしてるんだ。
結局、海までドライブした後、夕方の砂浜で潮風に吹かれてすっかりリフレッシュしてしまった。
それにやっぱりリョウと一緒に過ごすのは楽だし楽しい。
海から笑いながら戻って来て、車に乗り込んで僕がシートベルトを付けた瞬間、リョウは僕の手を取った。
「ねぇ、たっくんは俺のこと嫌い?」
リョウは僕の人差し指をゆっくりなぞりながら聞いてきた。
僕はそのリョウの指の動きを見つめながら、答えた。
「…嫌いじゃない。だから困ってる。僕誰かとちゃんと付き合った事がないから、何が正しくて、何が間違ってるのかも分からないし。」
「そうだよね。でも心はさ、頭で考えても間違っちゃうんだよ。身体は正直だから、嫌なものは嫌だし、大丈夫なものは大丈夫だし、好きなものは好きってハッキリ答えてくれるんだ。
もし分からないなら俺ともう一度だけ寝てみない?そしたら答えはっきり出ると思うよ。
たっくんが俺のことちゃんと考えようとしてくれてるのも良く分かるし、嬉しい。
この前はお酒も入ってて、なし崩しだったでしょ。
もし、もう一度だけ寝てみてダメだってたっくんが言うなら、俺諦めるよ。
諦められるか分かんないけど、たっくんに嫌がられてまで追いかけるの辛いから。
だから、ね?最後にもう一度だけ試してみない?」
僕はリョウの真っ直ぐ僕を見つめる目を見ながら思った。
僕も男だ。リョウがこんなに赤裸々に自分の気持ちを僕にぶつけてくれてるのに、逃げるのはダメじゃないかって。
この時単純な僕は、ヒツジの皮を被ったオオカミのリョウの百戦錬磨ぶりを侮っていたとしか思えない。
今の僕なら言える。この時の僕がリョウにとってはヒツジ以下のヒヨコレベルの身体も心も恋愛初心者だったって。
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