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第14話 抱きしめるのはどっち?

僕がうっかりリョウを抱きしめたいなんて口走ったせいなのか、リョウは急に黙りこくって僕の手を引いて早足で歩き出した。僕はリョウの剣幕に目を白黒させて、慌ててついて行った。 気がつくと辺りはすっかり夕闇が迫っていて、ひと気がなかった。買い物ですっかり遅くなってしまったらしい。僕は話しかけても虚な返事しかしないリョウにため息を吐いた。僕が立ち止まると、リョウはハッとした様に僕の顔を困り顔で見た。 「リョウ、何か気に障ったんなら言ってくれないと…。僕、デートだってそんなに経験ないのにどうしていいか…。」 僕はさっきまで凄く楽しい気分だったのに、リョウが何考えてるのか分からなくてすっかり落ち込んでしまっていた。リョウは僕の両腕を優しく撫でると小さな声で言った。 「違うんだ。たっくんがどうとかじゃないよ。俺の問題。たっくんに呆れられるかもしれないけど、そんな悲しい顔させるくらいなら正直に言うよ。」 僕は、リョウの真っ直ぐな視線が熱さを感じさせてるのに気づいた。 「たっくんが可愛すぎて、早く俺の部屋に連れ込みたかっただけ…。ごめん、なんか俺余裕なくって。おれ、たっくんだと、ホント我慢できなくて。…怖くなっちゃった?俺ヤバいやつだよね…。」 僕は急にリョウが僕と同い年なんだって思い出した。僕にはとても大人っぽく見えてたけど、同じ20歳の男なんだ。僕は急に嬉しくなって、リョウが可愛く思えて、リョウの首筋に額をくっつけて言った。 「…バカ。僕だってリョウとくっつきたい。」 たっくんは息を呑んで僕をぎゅっと抱きしめると、何やらぶつぶつ言っていた。僕はリョウを見上げて少し荒くなった息を吐き出して言った。 「ね、…連れ込むんじゃなかったの?」 僕たちはそれからお互い無言で早足で歩くと、案外近くまで来ていたのか直ぐにリョウのマンションにたどり着いた。僕はドキドキする心臓に、それこそ全身が波打つ気がして倒れそうと思いながら、リョウのドアの鍵を開ける手元をジリジリとしながら見つめていた。 気づけば僕はリョウに激しく口づけられていた。強引にこじ開けられた口に入ってきたリョウの舌に、僕も高まった欲望をぶつけた。ピチャピチャと耳に聞こえる卑猥な音に、僕はブルリと身体を震わせると、リョウは瞼を少し開けた欲の滲む眼差しで囁いた。 「たっくん、好きだ。好き過ぎて俺、たっくんに手加減出来ないかも…。」

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