21 / 32

第21話 リョウside自業自得

たっくんの強張って、掠れた声で発せられた言葉。俺が誰とでも寝るのかと言う言葉。俺はその時に何て言っていいか分からなくなってしまった。今は絶対違うって分かっている。俺にはたっくんしかいないんだ。でも俺が誰とでも寝ていた事は間違いではないわけで。そんな俺の一瞬の躊躇いがたっくんを傷つけてしまった。 「…そうなんだ。僕、ちょっと用事思い出したから先に帰るね。」 そう言いながら少し潤んだ瞳を見て、ますます俺は何も言えなくなってしまった。 「おいっ、何で黙ってんだよ。拓もちょっと待て。ちゃんと話したほうがいい。」 さっきから黙っていた陸斗が俺を睨みながらも、拓の腕を掴んで引き戻した。 「だって、リョウが僕に話す事ないみたいだから…。」 俺はたっくんの側に素早く動くと言った。 「話ならいっぱいあるし、ちゃんと聞いて欲しい。たっくんに誤解されたくないんだ。でも俺、たっくんに会う前酷かったから、たっくんに知られたら軽蔑されるかもって思って、何も言えなくなっちゃって…。」 俺たちがこんなに深刻なのに、茂紀は急に笑い始めると顔を両手で覆って言った。 「やべー、これって修羅場だよな?ふふふ。俺こーゆうの、初めてなんだけど。マジで面白いし。」 陸斗は茂紀の様子に呆れたように肩をすくめるとイスから荷物を持ち上げて、ちらっと周囲を見て言った。 「俺たち行くから、拓たちはゆっくりちゃんと話したほうがいいぜ。あと、結構注目されてるから、場所は変えたほうが良いと思うけどね。」 陸斗の言葉に周囲の大学生たちが、急に動き始めたのを感じて、俺たちが注目の的だった事に気づいた。俺はたっくんを見て小さな声で言った。 「…たっくん、話聞いてくれる?」 たっくんは少し迷っていたみたいだけど、茂紀と陸斗の顔を見て、周囲から注目されてる事にも気づいて、顔を赤くしながら俺に頷くと先に立って歩き出した。俺は陸斗たちに礼を言うと、慌ててたっくんの後を追いかけた。たっくんは強張った顔でどんどん歩いていってしまうので、俺は取り付く島もないたっくんに焦っていた。 突然たっくんは立ち止まると、俺に視線を合わさずに言った。 「どこで話すの。」 俺はたっくんの顔を覗き込んで言った。 「…俺のこと、今までのこと、全部話したいからうちに来てもらっても良いかな?たっくんがそれ聞いて俺のこと嫌いになったら、俺きっとショックで動けなくなりそうだから。」 ちょっと迷いながらも黙って頷いてくれたたっくんの後をついていきながら、俺は心臓がドキドキ五月蝿くなるのを感じていた。

ともだちにシェアしよう!