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第29話 リョウの残したもの

僕は大学の駅から足早にキャンパスまで急ぎ歩いていた。結局、ビキニに興奮したリョウに貪る様に悪戯されて、僕は息も絶え絶えになってしまった。もう本当に間に合わなくなると、焦った僕は、ほとんどリョウから逃げる様にバタバタと身支度して部屋を後にしたんだ。 その時にリョウに言われた事を思い出して考え込んでいた僕は、後ろから肩を叩かれてハッと現実に引き戻された。 「よぉ、珍しいな。拓がギリギリなんて。…あー、そうゆう事か。良かったな、仲直り出来て。」 陸斗が僕を一瞥して僕の喉元に一瞬目を止めてから言った言葉に、僕はちょっとした違和感を感じて尋ねた。 「陸斗、何?」 陸斗は一瞬の躊躇の後、自分の鎖骨を指差して言った。 「ここ。ばっちり付いてる。でもそのTシャツじゃ、オーバーサイズだから隠れないな…。茂紀なら、テーピングとか持ってるかも。貰って貼ったら?」 僕は自分の鎖骨を撫でながら、恥ずかしさに俯いた。そんな僕に陸斗は遅れるぞと頭を掴んで、早足で歩き出したので僕も慌てて後を追いかけた。 僕はこの襟のくれたTシャツを貸してくれたのも絶対ワザとだと、リョウを恨んだ。道理で大学までの電車の中で、随分チラチラ見られると思ったんだ。くそっ。今度仕返ししなくちゃ。 結局、茂紀にカフェテリアで出会うまで僕は数人の顔見知りに散々キスマークを揶揄われて、ぐったりとしてしまっていた。しかも、昨日のリョウとの修羅場?を結構な人が知ってて、仲直り出来て良かったねってニヤニヤして男女共に言われたのが、心を削られた…。 「何だか、拓とリョウくんだっけ?すっかり公認カップルになりそうじゃん。まぁ、あんなカッコいいリョウくんが子犬系の拓に追い縋っちゃたの見たら、誰でも応援したくなるよな。女子なんか妄想爆発しちゃってんじゃねぇの?」 そう言ってケラケラ笑う茂紀は相変わらずの能天気さだったけど、僕はそんな感じで皆が受け止めてくれたことに安堵もしていたんだ。僕は思い切って二人に聞いてみた。 「ね、二人は、その、男同士のカップル?とか、気持ち悪いとか思わない…の?」 僕の問いかけに二人は顔を見合わせると、陸斗がニヤニヤしてとんでもない事を大声で言ったんだ。 「ああ、だってどう見ても王子様と子犬がじゃれついてる様にしか見えないからなぁ。どっちかというとほっこりするっているか。生々しくないし。拓のその癒しキャラってのが大きいかもなぁ。まして、俺は拓なら抱ける!お前下手な女子より可愛いぞ?」

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