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第31話 リョウの提案

結局今日もまたこの部屋に戻ってきてしまった。僕は何だか可笑しくなってクスリと笑った。マンションのチャイムを鳴らすと、バタバタと足音がして、ドアがサッと開いた。 「たっくん!遅かったね。俺迎えに行こうかと思ってたとこ。結構ここら辺暗いし、心配だったんだよ?」 うん、僕は女の子かな?僕はリョウの過保護ぶりにちょっと半笑いで、勝手知ったる玄関で靴を脱いで揃えた。僕が顔を上げると、リョウがニコニコと僕を見つめて言った。 「なんかさ、たっくんのそうゆうお行儀の良いところ見るとさ、いいお嫁さんになりそうだよね?あ?いいお婿さん?」 いやいや、どっちでもないだろ。僕は相変わらずのリョウの溺愛ぶりにちょっと気が削がれて、リョウの横をスルリと通り抜けながら言った。 「…どっちかというと、料理上手のリョウがいいダンナさんになれるんじゃない?」 背後で、何か『俺が、たっくんのダンナさん…。いいっ!』って聞こえたけど、知らんぷりしよう。そうしよう。 「たっくんの荷物ここに置いていいから。…ちょっとづつ、たっくんの荷物が増えていって、なし崩しに同棲するってのもいいかも⁉︎」 うん、わざと僕に聞こえるように言ってるよね?僕は学校帰りに、自分の服や授業に必要なものを取りに寄ってきた。今日はリョウがバイトの日だったから、帰る頃に合わせてリョウの家に来たんだ。 昨日の今日だから、別に来る必要はなかったんだけど、朝リョウに言われた「一緒に住もう」の話がしたいってメッセージを送ったら、泊まりに来てくれって言われたんだ。 僕はリョウとソファに座った。手を握られた上に、何だ凄く密着してる…。 「‥あのさ、リョウが朝言った話なんだけど…。」 急にリョウが僕をぎゅと抱きしめて言った。 「あー、聞きたくないけど、聞きたい!良い話しか聞こえない!」 僕はクスッと笑ってリョウの背中をポンポンと叩いた。 「じゃあ、聞こえるんじゃない?僕もリョウと一緒に住みたいから。」 リョウはバッと俺から離れると腕を掴んで俺の顔を見つめた。 「本当?マジで?俺と一緒に住んでくれるの⁉︎」 僕はリョウの少し赤らんだ顔をスルリと撫でると、自分から触れるだけのキスをして言った。 「…うん。だって僕もリョウと一緒にいたいから…。うわ、ドキドキして死にそう…。」 自分からキスしたくせに、僕はすっかり照れてしまって顔を手で覆って俯いた。そんな僕を、リョウがどんな気持ちで見つめていたか、その後で思い知らされることになるんだけど、僕はまだ恋愛初心者で、煽るとか、煽らないとか、自覚がなかったんだ。

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