5 / 164

第一章・5

「個人的に、と申されますと!?」 「私の家政夫になってもらう」 「給与は、いかがなさるおつもりで!?」 「安心しろ。私のポケットマネーから出す」  何とも物好きなことで、と副店長と人事部長は呆れ顔だ。  当の真だけは、口の端を上げてご機嫌だった。  久々に、面白い玩具が手に入るのだ。  本採用にする3番か5番だかはもう二人に任せてしまって、履歴書片手に携帯を操作していた。 「もしもし、津川くん?」 『はい。先ほどは、ありがとうございました』 「結論から言おう。採用だよ」 『ホントですか!?』  ただし、と真は続けた。 「ただし、私の家政夫に採用だ。ボーイズ・バーのスタッフじゃない」 『それで結構です! ありがとうございます!』 「じゃあ、詳しい話がしたいから。1時間後に、『ミスズ』の前のカフェ・ソレイユに来てくれる?」 『はい!』  これで、良し。  鼻歌でも歌う気分で、真は応接室を後にした。

ともだちにシェアしよう!