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第二章・4

 急いだつもりだったが、真の帰宅は午前2時近くにになってしまった。  だがしかし。 「お帰りなさい!」 「な、何だ。寝てなかったのか!?」 「ご主人様を放って、自分だけ寝るわけにはいきませんから」 「ご主人様、と来たか。嬉しいな」  杏はさっそく真のジャケットに手を掛けている。 「お風呂、湧いてます。お食事、済まされましたか?」 「ああ、何かイイね。家庭的な雰囲気」  一匹狼の真だが、囲ったペットにこうやって、ちやほやされることは大好きだ。 「ではまず。お帰りなさいのキスをしてもらおうかな」 「え」 「え?」  真は、瞬時に理解した。  杏は、ドン引きしたのだ。 「え、あ。冗談だ!」 「そ、そうですよね。冗談ですよね!」  軽く食事ができれば嬉しい、などと取り繕いながら、真はジャケットを脱いでタイを緩めた。 (まさか、思いきり拒否られるとは)  少々自分に自信を無くしながらキッチンへ行くと、そこには良い香りが漂っていた。

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