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第二章・5
「もう遅いので、雑炊です」
「私は、徹夜明けでもステーキを食べる男だぞ」
「今は大丈夫でも、年を重ねたら体に響きます」
「う……」
正論だが、いちいち叱られる真だ。
しかし、雑炊は素敵に美味しかった。
「これは美味い。米から、ちゃんと炊いたのか?」
「解ってくださいましたか?」
料亭で出される雑炊にも負けないくらい、杏の作った料理は美味しかった。
出汁の風味と具の旨さが、絶妙に溶け合っている。
添えられたキュウリの浅漬けも、手作りだ。
歯ごたえも風味も良く、いくらでも入る。
「ありがとう。とても美味しかったよ」
「お粗末様でした」
ご機嫌な手料理は、真の胃を喜ばせた。
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