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第三章・7

 二人は唇で繋がり、温かな体温を分かち合った。 (しちゃった。キス)  真が少し唇を動かし、杏のリップを食んだ。 「ひゃっ!」 「ごめんごめん」  一気に杏が離れ、真は愉快に笑った。 「君は、ホントにウブだな」 「すみません」  胸に手を当て、どきどきと打つ鼓動を鎮めることにやっとな杏だ。  だが、彼が用意しているカタログは、まだまだある。  昨日、家電量販店で山ほどもらってきたのだ。  欲しいものは、たくさんあった。 「さて、次は? 何が欲しいのかな?」 「あ、あの。ちょっと良い炊飯器です」  真は、杏を眺めながらニヤニヤしている。 (全部買ってあげるから、その都度キスしてもらおう!) (もしかして、これからも家電を買うごとに『ご褒美キス』を!?)  邪な真の企みに気づきつつも、家電のおねだりはしなければならない杏だ。  カタログを全て消化したころには、ソファにくたんと横になって、はぁはぁ言っていた。 「キス、ずいぶん上手になったんじゃないか?」 「うう。まさか、こんなことに……」  震える杏の体を、真はそっと撫でた。 「ひゃっ!」 「何にもしないよ」  でも、最後の仕上げをさせてくれ。  そう言って、真は自分から仰向けの杏にキスをした。  蕩けるような、甘いキスを贈った。

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