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第四章 詩央の想い

「詩央くん、熱があるんだって?」 「今、休憩室で横になってます」  杏と同じ日に、真の店に採用された詩央。  ただしこちらは、ボーイズ・バーの接客スタッフとして、だ。  客の評判も上々で、すっかり店に馴染んできた矢先の出来事だった。 「無理は良くないな。すぐに帰宅させよう」 「それが。どうしても店長に話したいことがある、とかで」  真が出勤してくるまで、待っていたのだという。 「何だろう。困った客でもいるのか?」  悩みなら、聞いてあげなくてはならない。  真は、詩央の待つ休憩室に向かった。 「詩央くん、開けてもいいか?」  どうぞ、との声に、真はドアを開けた。  部屋には彼しかおらず、他のスタッフは皆それぞれの接客ルームに出払っている。  一人でソファに横になっている彼は、なるほど少し頬が赤いようだった。

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