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第四章・8
なぜだか、無性に杏の顔が見たくなっていた。
詩央と体の関係を持ったことに、罪悪感を覚えたわけではない。
私は、いつも独り。
一度に三人と、付き合ったことだってあるのだ。
だが、誰にも自分を縛らせずに来た。
恋人だなんて、作らないで来た。
だがしかし。
(杏くんを墜とす前に、詩央くんと寝ちゃうとはな)
手近なΩで性処理をするような、そんな自堕落なαになってしまった気がしていた。
早く。
早く、会いたい。
「待ってろよ、杏くん。今夜は少しだけ、大人にしてやるからな」
そんな高揚感を身にまとわせ、真は自動車を走らせていた。
逸る心も、走らせた。
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