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第五章 恋人、って?
真がマンションへ帰ると、杏はソファでうたた寝をしていた。
これは好都合だ。
真はそっと彼に被さると、その唇にキスをした。
「ん……」
起きない。
さらに好都合、とその形のいいリップを割り、舌を差し入れた。
「ん、ふぅ……」
寝ぼけ眼の杏をいいことに、真はその咥内を丹念に舐め、舌を絡めた。
「うぅ……。ん? んんッ!?」
うあぁ、と杏は起き上がった。
「北條さん! 何で、こんなに早いんですか!? 忘れ物ですか!?」
それには答えず、真はニヤニヤしている。
「どうだった? 大人のキスは」
「う……」
目を泳がせたあと、真っ赤になって下を向いてしまう杏が可愛い。
その小さく細い体を、真は抱き寄せた。
「あの、その。会社は?」
「早退してきた」
「どこか、具合が悪いんですか?」
「いや、逆に具合はいいよ。すごく」
ようやく君と、大人のキスができたからね。
そんな真に、杏は反論してきた。
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