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第五章・6

 では、と真は杏と向かい合わせに姿勢を変えた。 「キス、してくれ。大人のキス」 「え!?」 「ほぅら、やっぱりできない」 「できます! さっき、やったんですから!」  杏は、真の唇に口を重ねた。 (後は、北條さん、じゃなくって、真さんがやったみたいに……)  杏は、ちょろりと舌を出した。  ぺろぺろと唇をいつまでも舐めている杏を、真は心底愛しく思った。 (犬じゃないんだから)  そこで、そっと自分から薄く口を開けた。  ためらっていた杏の舌が、ついに真の咥内に忍んできた。 (口の中、舐めて。舌も、こうやって……) (いいぞ、杏。上手だよ)  ご褒美の意味を込めて、真は舌を動かした。  驚いて逃げようとする杏の舌をとらえ、擦り付けた。 「ぁん。ん、ふ、んん……」  やだ。  なんだろ、これ。  一瞬だけ真が離れて、囁いた。 「杏も、同じようにやって」  そしてまた、唇を合わせた。

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