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第六章・3
「いいだろう。一緒に、素敵なグリーンを選ぼう」
「ありがとうございます!」
ようやく笑顔を見せてくれた、杏だ。
真は、反省した。
この笑顔を見たいと望んでいるはずなのに、泣かせてばかりいる。
「デートに早起きは、つきものだな。今夜は、もう寝よう」
「え? あの……、その……」
「エッチは、もうしばらくお預けするよ」
真はそう言って、杏の前髪をかき上げ額にキスをした。
「おやすみ」
「おやすみなさい……、ありがとうございます」
杏のお礼は小さな声だったが、心からの安堵に満ちていた。
(これで良かったんだろう、多分)
杏の体を抱いて、真は瞼を閉じた。
しばらく後に、その瞼にそっと柔らかなものが触れられた。
(瞼にキス、か。可愛いよ、杏)
おそらく、これが彼の精一杯。
それでもそんなささやかなキスを喜びながら、眠りに就いた。
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