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第十章・3

『では僕はこの後、その遠田さまを接待すればいいんですね?』 『そうなんだ。嫌な客かもしれないが、よろしく頼む』 『解りました』 「北條さんのお願いなら、何だってききますよ」  電話口でそう言って、詩央はふふっと笑った。 「その代わり、今度デートしてもらえますか?」  こんなことまで、言ってみた。 『家政夫Ωくんが居るマンションになら、遊びに来てもいいよ』 『えっ……』 『早くしてくれないと、遠田さんが暴れ出す。ちょっと、電話切るからね』 『あ、あの!』  どういうこと? 「デートくらい、簡単にOKしてくれそうだったのにな」  なにせ、一度寝た相手である。  うまく事を運べば、恋人に昇格もあり得る、と詩央は踏んでいた。  それなのに、なぜ。

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