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第十一章・杏の看病

「お帰りなさい、真さ……、あれっ?」  玄関へ真を出迎えた杏は、驚いた。  すでに深夜2時を回っているのに、一人の男性を伴っていたからだ。  しかも、背負っている。  ただならぬ雰囲気を、杏は感じ取った。 「どうかしたんですか。その方は?」 「私の店のスタッフ、詩央くんだよ。詳しい話は後だ。彼を寝室へ運ぶから、ドアを開けてくれ」 「は、はい!」  真から詩央の荷物を受け取り、杏はすぐに寝室の明かりを点けた。 「温かくしてあげて」 「はい」  エアコンの設定を上げ、加湿器を稼働させる。  癒しの香りのアロマを焚き、固くしぼったタオルを額に当てる。 「ひどい熱……」  それに、すごく苦しそう。  杏は、詩央の額に乗せたタオルを新しく濡らしてしぼりながら、彼をいたわった。

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