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第十一章・4

 詩央は、悪夢の中にいた。  鬼面の入墨が、笑う。  あの遠田が、腕をつかんでベッドへ引きずり上げる。 「いや! もう、もう嫌です! 許してください!」  いびつなペニスが口元に突き出される。  後膣に、ねじ込まれる。 「いや! ヤだぁあ!」 「詩央さん、しっかりして!」  大丈夫。  大丈夫だから、落ち着いて。  詩央の手を、誰かが握ってくれる。 (誰? 北條さん……?)  ううん、違う。  小さな、華奢な手。  でも、なぜかひどく温かい、ぬくもり。 「うう……」 「もうすぐ真さん、お風呂から出てきますから。だから、頑張って」  詩央は、杏の手をしっかりとつかんだ。  華奢だが力強い、その手にすがった。

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