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第十一章・7

 挑発的に、会わせて欲しいと言っていた。  つまんない子なら、北條さんを奪おうと考えていた。 「でも、反則だよ。あんなにいい子だなんて」  涙が、こぼれる。  熱い涙が、頬を伝う。 「嫌いになんか、なれないよ」  心のこもった、朝食。  どれもが、食べやすいように気を配ってあった。 「僕のために」  そこへ、ドアを叩く音が。 「はい?」 「詩央さん、大丈夫ですか? 具合悪かったり、しませんか?」  詩央は、涙をぬぐった。 「ありがとう。もう、上がるから」 「タオルと部屋着、ここに置いておきますから」  サッシの向こうの人影が動き、やがていなくなった。  何て気の利く子だろう。 「北條さんが参っちゃうわけだ」  ざぶりと顔を湯で洗い、詩央は勢いよくバスタブから出た。  でも……。 「北條さん、気を付けないと。杏くんを狙う人が、他に現れるかも」  こんなに可愛い、良い子なのだ。  誰にでも好かれ、想いを寄せられるだろう。

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