83 / 164

第十二章 僕、詩央さんに訊きたいことが……。

「いけません、店長。12月24日は、オープンの方向で行きましょう」 「しかし、クリスマスだぞ? お客様、ほとんど来ないんじゃないのか?」  会議では、来るクリスマス・イヴの開店について揉めていた。 「12月のシフトは、すでに出ています。ほぼ全員出勤で、固めています」 「今からでも遅くない。臨時休業にしよう」  おかしいですね、と営業部長はいぶかし気な顔を真に向けた。 「昨年は、こんな我がままを言う人ではなかったはず」 「昨年と今年では、違う」  そう。  今年の真には、杏という可愛い恋人ができたのだ。  二人きりで、聖夜を過ごしたい。  そんな極めて自分勝手な理由で、子どものように駄々をこねているのだ。 「スタッフには、恋人や家族とイヴを過ごしたい、と思っている子もいるんじゃないのか?」 「それはまあ、そうですが」  しかし、と営業部長は手強い。 「クリスマスは本来、宗教行事。信者でもない人間が、祭事を理由に仕事を休むのは、やはり無理がありますよ」 「うぐぐ……」  そんな不毛なやり取りが交わされている頃、杏は重箱を手に『キャンドル』を訪れていた。

ともだちにシェアしよう!