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第十二章・2

「杏くん! どうしたの、今日は」 「詩央さん。良かったぁ」  まだオープンしていない店内に詩央の姿を見つけ、杏は安堵した。 「あの。真さんに、お弁当を。それから、これ皆さんに」  杏の右手にはランチボックスが、左手には風呂敷で包んだ重箱が下げられている。 「ああ、重かっただろう? 差し入れ、ありがとう」 「お口にあえばいいんですけど」  そこへ、頭を掻きながら不景気な顔の真が現れた。  営業部長は、手強いのだ。 「北條さん、杏くん来てますよ」 「え!?」  途端に、笑顔になる真だ。 「真さん、お弁当持ってきました」 「ああ、すまない。今夜は遅くなるから、先に寝ててくれ」  そこへ、詩央が重箱を掲げて見せた。 「差し入れ、もらっちゃいました!」 「それはいい。皆で、いただこう」  休憩室へ持って行きます、と詩央は先に立って歩き始めた。 「杏も、よかったら一緒に食べて行かないか?」 「いいんですか?」 「少し、息抜きがしたいよ」  二人で休憩室へ入ると、そこには数名のスタッフがくつろいでいた。

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