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第十二章・3
「皆、北條さんからの差し入れだよ」
「ありがとうございます!」
「御馳走になります!」
いやいや、と真は手を横に振った。
「用意してくれたのは、この子なんだ」
見ると、小さな少年がぴょこんとお辞儀をしている。
「初めまして。津川 杏です」
「そのうち、北條 杏になるよね」
「も、もう! 詩央さん!?」
赤くなる杏を見て、周囲はすぐに悟った。
「あ、この子が、社長の家政夫さん!?」
「いやいや。恋人、だよね~」
「可愛いなぁ。面接のときに、パイナップル持ってきたんだろ?」
口々に杏を冷かしていたスタッフたちだったが、重箱の中を見て、そしてそれを口にして、満面の笑みを浮かべた。
「すごい! おはぎ、こんなにたくさん!」
「甘さ控えめで、美味しい!」
「いくらでも、お腹に入っちゃいそう!」
そんな彼らと一緒におはぎを食べながら、真は杏の頭を撫でた。
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