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第十二章・4
「さすが杏だな。小豆から、ちゃんと炊いたんだろう?」
「さすが真さん。解ってくださいましたか?」
そんな二人を見て、詩央は声をかけた。
「北條さん、クリスマスは僕たちに気を遣わないで、どうぞ有給取ってください」
「そうは、いかないよ」
スタッフが真剣勝負で働いているのに、自分だけ浮かれるわけにはいかない。
そんな風に、真は考えていた。
「だったら、いっそのことエントランスで、クリスマスパーティー開いたらどうですか?」
詩央が、おはぎをもぐもぐさせながら言った。
「スタッフ全員と、お客様全員でのパーティーを」
「詩央くん、乱交パーティーするのか!?」
そうじゃありません、と詩央は笑った。
お客様にはどうしても好みがあって、自然に特定のスタッフばかり指名する。
パーティーを機に他のスタッフとも触れ合っていただいて、新しい出会いを演出してはどうだろう。
これが、詩央の提案だった。
「マッチングパーティー、か」
「結果的にそうなります」
それに。
「それに、そのパーティーになら、杏くんも出席できるじゃないですか」
詩央は、杏とイヴを過ごしたい真の本音を、すでに見抜いていたのだ。
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