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第十二章・7

 だけど、と杏はうつむき加減で告白した。 「真さんに、フェラしてあげたいんですけど。恥ずかしくて」 「それもそうだね」  なにせ、ほんの最近までは純潔だったという杏だ。  そんな子が、突然フェラは壁が高いだろう。 「そうだ。あのクリスマスパーティーが採用されたら、思いきって北條さんにフェラしてあげたら?」 「パーティーで、ですか!?」 「途中で、そっと抜けるんだよ。個室に入ってしまえば、後は二人きりだ」 「僕、できるでしょうか」  大丈夫、と詩央は微笑んだ。 「杏くん、北條さんを愛してあげて。思いきり、悦ばせてあげて」  それは、杏くんにしかできないことだから。  そんな言葉を、詩央は杏に贈った。 「頑張ってみます、僕」 「その意気だよ」  詩央は、耳の赤くなった杏を微笑ましく見た。  正直、真のことはまだ好きだ。  だけど、杏のこともまた大好きなのだ。 (この二人の幸せを、願わずにはいられないな)  カフェのBGMは、クリスマスソングに変わっている。  真と杏、素敵なクリスマスを過ごせますように、と詩央は胸を温めた。

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