90 / 164
第十三章 クリスマスの幕が開く
リビングに置かれた、コニファー。
以前、初めての杏とのデートで買い求めたグリーンだ。
それに、金や銀の星、リボン、サンタのフィギュアが飾られている。
小さなクリスマスツリーになったコニファーは、胸を張って輝いているようだ。
そして、杏が欲しいと言ったセントポーリア。
こちらも、絢爛に開き鮮やかな赤で彩られている。
「イヴまで、あっという間だったなぁ」
マンションは、杏があれやこれやと演出したクリスマス色に染まっていた。
「お待たせしました、真さん」
「いや、それほどは……」
真はそこまで言って、言葉を飲んだ。
スーツ姿の杏に、思わず見蕩れたのだ。
「どうかしましたか?」
「あ、あぁ。その、何だ」
似合うよ、とても。
そう褒めて、真は杏にそっとキスをした。
「嬉しいです。ありがとうございます」
「じゃあ、行こうか」
「はい」
クリスマス・イヴの『キャンドル』は、詩央の提案を採用して、24日だけは特別バージョンの接客になった。
エントランスで立食パーティーをし、お客様との親睦を図る、というものだ。
ともだちにシェアしよう!