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第十三章 クリスマスの幕が開く

 リビングに置かれた、コニファー。  以前、初めての杏とのデートで買い求めたグリーンだ。  それに、金や銀の星、リボン、サンタのフィギュアが飾られている。  小さなクリスマスツリーになったコニファーは、胸を張って輝いているようだ。  そして、杏が欲しいと言ったセントポーリア。  こちらも、絢爛に開き鮮やかな赤で彩られている。 「イヴまで、あっという間だったなぁ」  マンションは、杏があれやこれやと演出したクリスマス色に染まっていた。 「お待たせしました、真さん」 「いや、それほどは……」  真はそこまで言って、言葉を飲んだ。  スーツ姿の杏に、思わず見蕩れたのだ。 「どうかしましたか?」 「あ、あぁ。その、何だ」  似合うよ、とても。  そう褒めて、真は杏にそっとキスをした。 「嬉しいです。ありがとうございます」 「じゃあ、行こうか」 「はい」  クリスマス・イヴの『キャンドル』は、詩央の提案を採用して、24日だけは特別バージョンの接客になった。  エントランスで立食パーティーをし、お客様との親睦を図る、というものだ。

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