93 / 164

第十三章・4

 以前、おはぎを持っていった部屋は、あの時以上に多くのスタッフが控えていた。 「杏くん、今夜はスーツなんだね!?」 「詩央さん!」  カッコいいよ、と詩央も褒めてくれる。  しかし、そんな詩央もまた美しくドレスアップしていた。  セットアップを使った、セミフォーマルコーディネート。  細身のシューズまで、同じ色に合わせてある。  胸に飾られたチーフが、これまたシャツと同じ色だ。  細かなおしゃれに、気を配っている。 「詩央さん、すごくセンスがいいです……」  比べると、自分が七五三のお子様のようで、恥ずかしい。 「杏くん、自分に自信をもって。スタイリングは、そこが第一歩だよ」 「は、はい!」  そうだった。  真さんが、褒めてくれたんだ。 (もっと、胸を張らなきゃ!)  笑顔になった杏に、詩央はうなずいた。

ともだちにシェアしよう!