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第十四章 真の裁き

「いらっしゃいませ!」 「え、あ。えっと、また今度、来るよ……」  せっかくの客が、次々と逃げてしまう。  全ては、エントランスに到着した遠田のせいだった。  白のスーツに、白の革靴。  はだけたアニマル柄のシャツに、金の喜平ネックレスが光る。  周囲にはボディガードと称して、組の若い者を数名従えている。  まるで映画から抜け出て来たかのような、いかにも極道者の格好に、一般の客はすぐに怯えてしまうのだ。 「何だぁ、ガラガラだな、おい! これは、俺の貸し切りだな!」  自分がそうさせていると知りながら、面の皮が厚い遠田だ。  そこへ、真が登場した。  相変わらずの笑顔。  遠巻きに遠田を見ていたスタッフは、息をひそめて成り行きを見守った。 「店長、どうする気だろう?」 「何か策がある、って言ってたけど……」  詩央も、不安な表情をしている。  顔色が、ひどく悪かった。  そんな彼の手を、杏は握った。 「杏くん」 「大丈夫です、詩央さん。真さんは、きっと皆さんを守ってくれます」  小声だが、力強い杏の言葉だった。

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