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第十四章・2
「うん? 何だか甘っちょろい声が聞こえたが?」
『大丈夫です、詩央さん。真さんは、きっと皆さんを守ってくれます』
遠田の耳は、杏の言葉をさとく拾っていた。
声のした方に目をやると、そこには先日食った詩央が。
そして、見慣れぬ少年が立っていた。
「何だなんだ。可愛いお子ちゃまが、いるじゃねえか」
店のスタッフだろうか。
それにしては、スレていない雰囲気を身にまとっている。
「解った! おい、北條。こいつがお前の情夫か。家政夫くんかぁ?」
真は、ぞっとした。
まさか、勝負に出る前に、遠田に杏を知られるなんて!
「Ωか、お前。たっぷり可愛がってやるからな」
いやらしい笑いの遠田は、涎を垂らす勢いで杏を舐め回すように眺めている。
これは、絶対に負けられない。
真は、ずいと一歩、前へ出た。
「遠田さん、それはお断りしますよ」
「何だとぉ!?
途端に遠田は、ひどく不機嫌になった。
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