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第十四章・3

 遠田にとって真は、手懐けた番犬だった。  一匹狼の半グレ北條。  しかしその名は彼にとって、すでに過去のこと。  雇われ店長の器にお行儀よく収まっている真は、決して噛み付くことのない犬だ。  今夜も、その調子でやって来た。  この店のスタッフ全てを食い尽くす気分で、やって来たのだ。  ところが。 「遠田さん、今夜はお引き取り願います。堅気さんのパーティーと決めてますので」 「何だと。この店のオーナーは、この俺だ。極道の店の客が極道で、なぜ悪い!?」 「遠田さんに遠慮して、他のお客様が入れません」 「北條。お前だって、立派な半グレだ。堅気相手の商売なんて、いっそもう辞めちまえ」  いきなり噛み付いてきた真に、遠藤は少々面食らった。  しかし、ここは極道として退くことはできない。  若い者も見ている。  遠田組の組長としての、面子もあるのだ。

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