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第十四章・4

「では、こうしましょう」  相変わらずの笑顔で、真は言う。  ただ、その内容は物騒だった。 「遠田さん。今から10発、私を殴ってみてください。それまでに私が倒れずにこらえたら、お引き取りを」 「これはまた、面白い趣向だな」 「もし10発こらえたら、最後に私が1発だけ遠田さんを殴りますよ」 「ははは! いいだろう。俺も若い頃は、武闘派で通ったからな。覚悟しろよ!」  何てことを、と詩央は青くなった。 「北條さんを、止めないと」 「待ってください、詩央さん。真さんには、何か考えがあるんだと思います」  杏の、詩央を握る手が強くなった。  詩央は、その目を見た。  杏の眼差しには、信頼しかない。 (この子は。杏くんも、覚悟してるんだ)  この場にいる以上、もし真が気絶でもしたら杏もまた、遠田の餌食だ。  それを解っていながら、杏は真に賭けていた。 「解ったよ、杏くん。北條さんが勝つように、祈ろう」 「はい」  その場にいる全員が、固唾を飲んで見守っている。  ゆるゆるに緩んでいるのは、遠田だけだった。

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