118 / 164

第十六章・7

「料理の手伝いくらいできないと、この先も同じ過ちを繰り返すのかな、と思ってね」 「三村さん、前向きですね」 「北條さんは、どうなの? 杏くんがやっぱり料理担当?」 「僕、真さんの家政夫なんです」  だから、家事一切は僕がやってます。  そんな杏の言葉に、三村は頭の中にデータを残した。 (ということは、二人はすでに同棲してる、ってことか)  少し、ハードルが高くなったぞ。  だが、障害物は困難なほど燃えるものだ。  三村は、笑顔の杏に笑顔を返していた。  しかしそれは、下心のある悪い笑い。 (綺麗な子だ。清潔感もあって、仕草が愛らしい)  今まで、私の周りにはいなかったタイプ。 『いいえ。スタッフではありません。私の、大切な人間です』  真の言葉が思い出されたが、三村にとっては些細なことだった。  この容姿と財力に、今までひれ伏さなかった者はいないのだ。

ともだちにシェアしよう!