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第十六章・7
「料理の手伝いくらいできないと、この先も同じ過ちを繰り返すのかな、と思ってね」
「三村さん、前向きですね」
「北條さんは、どうなの? 杏くんがやっぱり料理担当?」
「僕、真さんの家政夫なんです」
だから、家事一切は僕がやってます。
そんな杏の言葉に、三村は頭の中にデータを残した。
(ということは、二人はすでに同棲してる、ってことか)
少し、ハードルが高くなったぞ。
だが、障害物は困難なほど燃えるものだ。
三村は、笑顔の杏に笑顔を返していた。
しかしそれは、下心のある悪い笑い。
(綺麗な子だ。清潔感もあって、仕草が愛らしい)
今まで、私の周りにはいなかったタイプ。
『いいえ。スタッフではありません。私の、大切な人間です』
真の言葉が思い出されたが、三村にとっては些細なことだった。
この容姿と財力に、今までひれ伏さなかった者はいないのだ。
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