123 / 164

第十七章・4

「月雁の味や盛り付け、自分の料理にも活かしてみたいと思わない? 北條さんも、きっと喜ぶよ」 「真さんが……」  確かに、料理教室に通うようになってからの杏の腕を、真は喜んでくれている。 「じゃあ、ちょっとだけ」 「決まりだ」  三村は、嬉しそうに杏に手を差し伸べた。  彼も自然に、その手を握った。 (何て華奢で、滑らかな手だ)  家事一切を任されていると言うが、肌荒れひとつ起こしていない。  三村はもう、その裸身に手を滑らせたかのように興奮してきた。 「じゃあ、楽しみにしてるよ」 「ありがとうございます」  その日はお茶だけにとどまったが、三村は浮かれていた。  城の外堀を、埋めた気でいた。

ともだちにシェアしよう!