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第十八章・2
一方詩央は、杏に電話でそれとなく探りを入れていた。
「杏くん、料理教室に通い始めたんだって? 誰か、友達できた?」
『はい。三村さん、っていう方と友達になれました』
「へえ、三村さんって常連さん、キャンドルにいるよ?」
『その三村さん、なんです』
杏は、真に効いた三村の素性を話した。
うんうん、と聞いていた詩央だったが、杏が彼と食事に行く約束をした話を聞いて、声を潜めた。
「それ、北條さんにも伝えた?」
『いいえ。きっと、反対されますから』
「北條さんに内緒にしてまで、どうして三村さんと食事に?」
『月雁で勉強して、真さんにもっと素敵なお料理を出せられたらな、って思って』
何て健気な。
(こんな杏くんの純愛を利用するなんて!)
一人で憤りながら、詩央は杏に警告を出し始めた。
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