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第十八章・3
「杏くん、最近発情期が近いみたい、って言ってたけど、大丈夫?」
『お薬、飲むようにしました』
「三村さんはね、気に入った男の子は必ずものにするような人なんだよ。危険だよ」
『そんなぁ。三村さん、冗談が好きで面白い人ですよ?』
詩央は、舌打ちしたい気持ちだった。
(普段はそうやって油断させておいて! やり方が汚いっての!)
『心配してくださって、ありがとうございます。でも、大丈夫です。僕は真さんのことを……』
「それは、解ってるよ。充分過ぎるほどに、解ってる」
『一応、用心はしますね』
「そうしてくれる?」
そして挨拶をし、詩央は通話を切った。
「杏くんは、ああ言ってたけど」
心配は、募るばかりだ。
「僕から先回りして、三村さんに釘を刺しておこう」
明日は、三村とのデートだ。
戦に出るような心地で、詩央は当日を迎えた。
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