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第十八章・6
「北條さん、杏くんが危険な目に遭ってます」
「何だ、藪から棒に」
詩央は、三村が杏を食事に誘い、うまく行けばその体さえ狙っていることを明かした。
「三村さんが!? 杏、あれほど言っていたのに……!」
「杏くんを責めるのは、やめてください。彼はただ純粋に、北條さんを想っているだけなんです」
詩央は、杏が一流料亭の技術を体験し、それを真への愛情に加えたいと考えているだけなのだ、と訴えた。
「悪いのは、三村さんなんです!」
「そ、そうか」
「それから、北條さん。あなたが、しっかり杏くんを捕まえておかないから、こんなことに!」
「す、すまん」
それでは、と真は詩央にうなずいた。
「三村さんとの食事会には行かないように、杏に言っておくよ」
「でも、それは杏くんが可哀想ですよ。楽しみにしてるんですから」
そこで、いたずらっぽく詩央が目を光らせた。
「北條さん。2月14日に、月雁の予約なんとか取れませんか?」
「あそことは別口で取引があるから、多少の無理は通るが」
「三村さんと杏くんの部屋の隣に、北條さんと僕とで隠れていましょう」
何と。
「詩央くん。君は何を企んでいるのかい?」
「当日、教えてあげますよ」
そう言って、詩央は微笑むにとどまった。
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